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【政治】

旧優生保護法下の不妊手術 2700人分の資料現存

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 「不良な子孫の出生防止」を目的に一九九六年まで存在した旧優生保護法を巡り、知的障害などを理由に不妊手術を施されたとみられる個人名が記された資料が、十九道県に約二千七百人分現存していることが二十五日、共同通信の調査で確認された。不妊手術を受けたとされる約二万五千人の一割にとどまるが、当事者の「被害」の裏付けとなる可能性がある。国は個人資料の保存状況を把握しておらず、実態調査など今後の対応が問われる。

 三十日には、旧法下で不妊手術を強いられた宮城県の六十代女性が国に損害賠償を求める初の訴訟を起こす。二月二日には仙台弁護士会が電話相談窓口を設置。札幌、東京、大阪、福岡の弁護士会にも窓口開設を呼び掛けており、資料開示や謝罪・補償を求める動きが広がるか注目される。

 一方、約二万五千人の九割近くは関連資料が保存されていない可能性も判明。既に廃棄されたものが多いとみられ、識者は「当時の実態解明が困難になり、被害者への謝罪や賠償も難しくなる」と指摘している。

 四八年施行の旧法は知的障害や精神疾患の男女らへの強制も含めた不妊手術を容認。日弁連によると、国の優生保護統計報告などから、障害などを理由に手術を受けたのは約二万五千人で、うち約一万六千五百人は本人の同意を得ずに行われた。

 今回の調査は昨年十二月以降、全都道府県(担当部署と公文書館)に不妊手術に関する資料の有無を文書などで聞き、回答をまとめた。

 不妊手術を受けたとみられる人の氏名などが記された資料は、北海道など十九道県に二千七百七人分あった。内容は優生保護審査会の資料や手術費・入院費の支出書など。

 本人同意がないとみられるのは千八百五十八人で、同意は六人、不明は八百四十三人。性別は男性七百八十人、女性千九百十六人、非公表十一人だった。年齢別では成人千八百八十一人、未成年八百十一人、非公表十五人(うち一人は年齢層不明)。非公表の理由は「個人が特定される恐れがある」としている。

 資料がない理由は「保存期間を経過したため廃棄」(茨城、山梨など)が目立つ。内閣府によると、行政文書は、都道府県が公文書管理法に従い条例や規則で保存期間を規定。期限超過分は歴史的価値などを考慮し、永年保存か廃棄かを都道府県が決めるという。

◆早急な実態調査を

<立命館大生存学研究センターの利光(としみつ)恵子客員研究員の話> 障害を理由に生殖機能を失わせるのは、著しく人権を侵害する行為だ。個人名が記された資料の現存が確認されたのは、実態に迫る上で大きな意味を持つ。

 一方で大半は既に存在しないとされ、全体像の解明を困難にするとの懸念が残る。存命している当事者もおり、被害を裏付ける資料を廃棄すべきではない。政府は各自治体を通じて早急に実態を調査し、旧優生保護法下での施策を検証する必要がある。

 また当事者に名乗り出るよう呼び掛け、施策の誤りを謝罪して補償すべきだ。高齢になった当事者が名乗り出るには周囲のサポートが重要。手術に関わった医療や行政の関係者が証言などで事実関係を明らかにしてほしい。

<厚生労働省母子保健課の話> 調査結果について国としてコメントする立場にない。手術を受けた当事者の話を個別に聞かせてもらいたいが、それ以上の対応は現段階では考えていない。

 

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