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【政治】

9条改憲、自民条文案評価は 戦力不保持 死文化の恐れ

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 自民党執行部は二十二日の党憲法改正推進本部で、焦点の九条改憲について意見集約を図る。安倍晋三首相は、自衛隊の存在を憲法に書いても「任務や権限に変更が生じることはない」と強調するが、疑問の声も。長谷部恭男・早稲田大法学学術院教授に、自民党が検討している条文案について評価を聞いた。 (聞き手・生島章弘、中根政人)

 −執行部の念頭にあるのは現行の九条一、二項を維持し、新設する「九条の二」で「自衛隊」を明記する案。「国民の安全を保つため」などの言葉を補うことも検討している。

 「こうした条文を追加すると、戦力不保持などを定めた二項が死文化する恐れがある。後からできた法が前の法に優越するのは法学の一般原則だからだ。自衛隊と書くだけでは組織の性格や権限が条文上明確にならず、法律で全て決めることになりかねない。このことは『九条三項』でも『九条の二』でも変わらない」

 −自民党は、武力行使の要件は現行憲法下と変わらないと主張している。

 「国会審議でそう説明したとしても、将来の政府は必ずしも拘束されない。現行憲法も(可決前に)帝国議会で答弁した意味合いと、今の解釈が異なるものがある。安倍政権自体、集団的自衛権行使を禁じた長年の解釈を根拠なく変えた」

 −国民投票で否決される可能性も。

 「安倍首相の考えに沿った改憲案の否決は、主権者たる国民が(集団的自衛権を限定的に行使できるとした)自衛隊の現状を否定したことを意味する。現状に戻れないのに、どんな組織なら(憲法上)いいのか分からず、大混乱に陥る」

 −現行憲法が自衛隊の存在を明記していないことに、どんな意義があるのか。

 「九条で戦争放棄、戦力不保持を定めていても『ここまでの武力なら行使できる』『こんな組織なら持てる』と説明したり、挙証したりする責任を政府に負わせていることだ。出発点がゼロだからこそ、任務や権限は法律上、できることだけを挙げる『ポジティブリスト』になる。自衛隊の存在を憲法に明記してしまうと、政権によっては『われわれが説明する必要はない』と言い出しかねない」

 −自民党内では、自衛隊ではなく「自衛権」を規定する案への支持も根強い。

 「自衛権と書けば、フルスペックの集団的自衛権を認めることになる。むしろ、集団的自衛権の行使容認を巡る違憲論争に決着をつけることが先ではないか」

<はせべ・やすお> 1956年生まれ。早稲田大法学学術院教授。日本公法学会理事長。2015年6月、自民党推薦の参考人として衆院憲法審査会に出席し、審議中だった安全保障関連法案を違憲と指摘した。

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