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【政治】

一日も早い救済の契機に

<解説> 旧優生保護法の下で国家が推進した人権侵害に対し、国は「当時は適法だった」として、一九九六年の母体保護法への改定後も二十二年間、ずっと被害者の救済を頬かむりしてきた。七十年前に施行された旧法の被害者は高齢化しており、国や国会は今回の一斉提訴を一日も早い謝罪や補償の契機とすべきだ。

 この日提訴した三人は、いずれも手術を裏付ける記録が見つかっていない。都道府県に残る個人名が記載された資料は、本紙のまとめで、国が把握している強制不妊手術件数の25%、四人に一人にとどまる。それでも裁判へと突き動かしたのは、家族に打ち明けられずにいたつらい記憶、そして手術痕という今も消えない苦しみだ。記録がないのは被害者の責任ではなく、謝罪や補償の枠組みで不利益とならないよう配慮すべきなのは当然だ。

 「拭いがたい屈辱感や無力感。差別には、行われた時から被害者を沈黙させる力が内在している」。自らも女性障害者の一人として、旧法による被害者を支援してきた米津知子さんはそう実感している。

 一月の提訴に続き、原告は全国で計四人になった。声を上げたくても、上げられない大多数の被害者に思いをはせて、「旧法後」の今も、差別や偏見が日常に潜んでいるのではないかと問い直す時だ。 (石川修巳)

 

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