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【政治】

政府、正反対の政策混在 「残業代ゼロ」「残業上限規制」 

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 政府の「働き方」関連法案は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ、残業代ゼロ制度)」創設と、残業の罰則付き上限規制という方向性が正反対の制度が混在する。経緯をたどると、安倍晋三首相が経済成長重視派として知られる自民党の塩崎恭久氏を厚生労働相に起用したことがきっかけとなっている。 (安藤美由紀)

 「ぐっと我慢していただいて、とりあえず(法案を)通すということで応援してほしい」

 二〇一五年四月、企業経営者ら約百人が参加した東京都内での勉強会で、塩崎厚労相(当時)は、労使が決めた時間だけ働いたとみなす「裁量労働制」の拡大とともに、高プロ創設を盛り込んだ労働基準法改正案の成立に意欲を示した。

 政府が同月、国会提出した改正案に、財界は「高プロの対象範囲が狭すぎる」と不満が大きかった。塩崎氏は、将来的な対象拡大に含みを持たせることで理解を求めたのだ。

 塩崎氏は、第一次安倍政権で官房長官を務めるなど首相と関係が近い。第二次政権では一四年九月〜一七年八月に厚労相を務めた。就任時の首相の指示は「経済再生にふさわしい労働政策」。就任会見では「経済こそ最優先という中で、厚労行政から何ができるかも含めて全力を尽くす」と意気込んだ。

 塩崎氏のもと、高プロは、十カ月早く議論が始まった裁量制拡大と同時という「異例のスピード」(厚労省関係者)で、厚労相諮問機関の労働政策審議会を通過。労基法改正案が国会提出された。だが塩崎氏の「ぐっと我慢」発言が漏れ広がり、野党や労働界は「なし崩しに緩和される」と猛反発。安全保障関連法を巡る与野党対立もあり、結局は審議入りしなかった。

 首相は一六年一月の施政方針演説で、長時間労働の抑制と、正社員と非正規の不合理な差をなくす同一労働同一賃金の実現に言及。規制緩和一辺倒から軌道修正し、局面打開を狙った。大手広告会社・電通に勤めていた高橋まつりさんの自殺が労災と認定され、労働規制強化の流れは決定的になった。

 首相が議長を務める「働き方改革実現会議」は一七年三月、残業時間の上限規制、同一労働同一賃金の確保を盛り込んだ実行計画を決定。一方で財界は高プロ導入と裁量制拡大を求め続け、残業規制強化と残業代ゼロが混在する法案策定へと進んだ。首相は、賃上げや子育て政策への三千億円拠出も財界に要請しており、政府関係者は「財界とのディール(取引)だった」と指摘する。

 

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