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【政治】

セクハラ禁止 法整備を 角田由紀子弁護士に聞く

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 前財務次官のセクハラ問題を受け、政府は十二日に対策を強化する具体策を決定する運びだ。研修義務付けなどの予防策が盛り込まれる見通しだが、法整備は先送りの方向。セクハラ問題で長年、訴訟や啓発に携わってきた弁護士の角田由紀子さんに、あるべき制度や意識改革の必要性を聞いた。 (坂田奈央)

 −前次官の問題を踏まえた予防策は。

 「今ある男女雇用機会均等法や人事院規則の運用を徹底すべきだ。人事院規則は、各省庁の長の責務としてセクハラ防止に必要な措置を講じることや研修実施を定めている。麻生太郎財務相や前次官は責任者だが、そういうことを知っていたのか」

 −セクハラ対策を強化する法整備は必要か。

 「禁止法はあったほうがいい。日本にセクハラ行為そのもの、さらには性差別を禁止する法律はない。一九九二年にセクハラ被害で初めて勝訴した裁判では平等権をうたった憲法一四条や均等法を総動員して、セクハラが原告への権利侵害に当たるので『不法行為』だと主張した」

 「その後も訴訟には勝っているが、日本では性差別という根本の問題を議論してこなかった。家父長制や賃金差別など、女性を巡るあらゆる矛盾の根源に性差別がある。『セクハラ』という言葉が独り歩きして、いかに女性にとって深刻な人権侵害であるかが見過ごされてきた。四半世紀が過ぎても状況が変わらないのは、出発点を置き去りにしてきたからではないか」

 −法整備するなら、具体的な内容は。

 「均等法に禁止規定を設けることはできる。犯罪として扱うのが良いかは議論があるだろう。セクハラには、刑法の強制わいせつ罪や侮辱罪に問える行為もあるが、含まれないものについて新しい類型をつくることは不可能ではない」

 −意識の問題も大きい。

 「土台にある性差別の構造をなくさない限り、セクハラはなくならない。幼いころから自分を大事にし、同じように他人を大事にする教育をしていかなければならない。小学生からの問題だ。性暴力を受けるというのは、どういうことなのか。共感できる想像力があれば加害者にはならない」

<つのだ・ゆきこ> 1975年に弁護士登録。89年、セクハラ被害女性の弁護団の1人として福岡地裁に提訴し、92年にセクハラでは初の勝訴に導いた。以来、法的なセクハラの対応に携わってきている。2004〜13年、明治大法科大学院教授。

◆海外先行 罰則付き法律も

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 日本のセクハラ対策は、諸外国より遅れが目立つ。国連の国際労働機関(ILO)は、条約の一つである一一一号で、性別を含めた雇用と職業における差別待遇の撤廃を目指しているが、日本は批准していない。

 ILOは五月に始まったスイスでの年次総会で、職場での暴力やハラスメントをなくすための新たな国際基準の採択を目指し、議論に着手。八十カ国を対象に調査した結果、仕事に関する暴力やハラスメントを規制する国は六十カ国あったが、日本は「ない国」に分類された。

 国立国会図書館によると、国・地域別では欧州連合(EU)が二〇〇二年の改正男女均等待遇指令で、セクハラを性差別と見なす規定を追加。フランスは刑法と労働法典でセクハラを禁止し、罰則もある。台湾は、強制わいせつ罪に至らない性的行為を処罰する法律を持つ。日本は男女雇用機会均等法で、事業主に対してセクハラの予防、相談窓口の設置などの事後対応を義務付けているが、行為そのものは禁止していない。

 お茶の水女子大の戒能(かいのう)民江名誉教授(ジェンダー法学)は「一番の基本となる男女共同参画基本計画でもセクハラの位置づけがはっきりしていない」と指摘。セクハラ禁止の法整備は「政治が決断すればできることだ」と強調する。 (安藤美由紀)

 

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