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【政治】

雇用の水増し「共生の目標 踏みにじる」 積極雇用企業の障害者会長

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 障害者雇用の水増し問題は、中央省庁が形だけの数値目標達成にこだわり、障害者雇用促進法が障害者の社会参加を促すために制定された経緯を軽視していた実態を浮き彫りにした。障害者雇用を進める企業や障害者団体からは、制度運用の見直しを求める声が上がる。自身も障害者で、障害者を積極的に雇用する福祉機器販売のアビリティーズ・ケアネット(東京)の伊東弘泰会長(76)=写真、内山田正夫撮影=に聞いた。 (城島建治、妹尾聡太)

 −水増しは長年、行われていた可能性がある。

 「信じられない。あってはならないことだ。法律が制定された当時、障害者は差別され、就職できない時代だった。法律は障害者の働く権利を守るためにつくられた。社会参加を促し、障害者と健常者が共に生きる共生社会を実現するのが目標ともいえるが、中央省庁はそれを踏みにじった」

 −再発防止に向けて何ができる。

 「厚労省は最低限、他省庁からの報告が事実かチェックする必要がある。障害者は健常者に比べて、就職するのが圧倒的に難しい環境にある。雇用率を水増しして、障害者を意図的に雇わない行為は、働く権利を奪うこと。憲法で保障された基本的人権の侵害だ」

 −民間雇用の実態は。

 「会社では雇わずに、特例子会社を設立して、障害者を雇用する企業が散見される。数値目標を達成するために、障害者ばかり集めるケースもある。これでは共生社会ではなく、分断社会だ。政府は民間企業の実態をきちんと把握し、指導する必要がある」

 −アビリティーズは多くの障害者を雇用している。

 「例えば、頸椎(けいつい)を損傷し、十分に指先を動かせない人でも、コンピューターを使って図面の作成をしている。知的障害の人はデイサービスで働いている。精神障害の人は福祉器具の修理や洗浄をしている。その人に合った職場環境と仕事を用意すれば、能力を発揮できる。一人一人が働きやすいように、そして生活しやすいように配慮することが共生社会への近道だ。二〇一六年に施行された障害者差別解消法もこうした合理的配慮を義務付けている」

<いとう・ひろやす> 1歳でポリオ(小児まひ)にかかり右脚が不自由に。高校卒業時は障害を理由に100社以上から就職を断られた。その後は働きながら大学に通い、1966年に福祉機器の開発や販売などを手掛ける「アビリティーズ・ケアネット」を設立。会長兼社長を務める。正社員は約800人。障害者雇用率は6.87%で、民間企業の法定雇用率(2.2%)を上回る。障害者手帳を自らの意思で持たない精神障害者も積極的に採用している。

 

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