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【政治】

<自民党総裁選 改憲の行方>(3)緊急事態条項の創設 国に権限 人権侵害に懸念

 自民党総裁選で、安倍晋三首相の対立候補となる石破茂元幹事長が、九条改憲より「緊急性があり優先度が高い」と訴える項目の一つが、大規模災害が起きた際の対処を定める緊急事態条項の創設だ。

 論点は「国の権限強化」と「国会議員の任期延長」。自民党が今年三月に四項目の改憲条文案をまとめるに当たり、議論が曲折したのは国の権限強化だ。

 二〇一二年の党改憲草案は、災害や海外からの武力攻撃時に首相が「緊急事態宣言」を出せば、国民は国の指示に従わなければならないとして、国に強い権限を認めた。具体的には国民の移動を制限したり、自動車や家を所有者の許可なく処分したりすることが想定された。

 こうした私権制限は、人権侵害につながるとの懸念が強い。改憲しなくても、災害対策基本法で対応できるとの指摘もある。

 条文案は対象を大災害に限定した上で、私権制限について直接的な表現は見送ったものの、「法律の制定を待ついとまがない」場合に政府が政令を制定できる規定を盛り込んだ。政令の内容によっては、国民の代表である国会での審議を経ず、国民の権利を制限する命令を出すことが可能だ。

 党執行部は当初、議員任期延長に絞る方針だったが、石破氏らが「災害対策基本法に緊急時対応の規定はあっても、憲法に根拠が明示されていないので自治体が使えない」と主張。執行部も受け入れた。

 一方、議員任期延長は、大災害で選挙の実施が難しくなった場合、衆院議員四年、参院議員六年と憲法で定められた任期を特例で延長できる内容。条文案は、衆参両院で三分の二以上の賛成があれば可能とした。

 憲法五四条には、衆院解散中に緊急事態が起きた場合、参院の緊急集会を開ける規定があり、「議員任期延長のための改憲は必要ない」との意見もある。延長された任期中、議員は国民の信任を受けていない状況で国会で議論することになり、国民主権の観点から問題という指摘も。

 首相は、過去に緊急事態条項について「大切な課題」と話したことがあるが、昨年五月に九条改憲を提案して以降、積極的には主張していない。野田聖子総務相も、今月発表した総裁選向けの政策で緊急事態条項には具体的に言及しなかった。 (木谷孝洋)

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