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【埼玉】

<ひと物語>全日本総合馬術選手権優勝・根岸淳さん 挑戦16年で悲願の栄冠

プリティーダーリンに乗る根岸さん=伊奈町のクレイン伊奈で

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 馬術の要素をほぼ全て盛り込んだ複合競技とされる「総合馬術」で、乗馬クラブのクレイン伊奈(伊奈町)の根岸淳さん(39)が十月の全日本選手権で初優勝した。

 これまで二〇一二年のロンドン五輪に出場するなど日本馬術界の第一人者として活躍してきたが、全日本選手権ではなかなか優勝できず「悔しい思いを重ねた」だけに、思いもひとしお。「初挑戦から十六年。長かった。本当にうれしい」と喜びを語った。

 馬との出会いは小学三年生のとき。当時住んでいた秩父市で、同市乗馬スポーツ少年団に入り、人馬一体となって競技する馬術のとりこになった。県立秩父農工科学高、専修大馬術部と進み、クレインに入社。各種大会で実績を積んできた。もちろん全日本選手権にも十五年前から出場してきたが、なぜか優勝に縁がなかった。

 念願を果たすために、今回の大会では、ロンドン五輪をともに戦った十六歳の牝馬プリティーダーリンを相棒に選んだ。「これまで乗ってきた馬より段違いに動きがなめらかで、速く走り、高く跳ぶ。柔と剛を兼ね備えている」と信頼を寄せていたからだ。

 ただ、プリティーダーリンはロンドン五輪後英国に残したままで、三年間離れ離れだった。昨年五月には、英国で他の騎手とペアを組んだ大会で右前脚を骨折。競技馬としては高齢で、引退も視野に入れる時期でもあった。本場欧州では戦えないとして、昨年十二月に日本に帰国したという経緯がある。

 再会した当時は、競技から半年も離れ「人の体重に慣れること」から調教を始めた。他にもけがの影響、英国との気候の違いなど不安要素ばかりだった。しかし、相棒を信じて入念に調教してきた。

 迎えた本番、背中から体が硬くなっていることが伝わってきた。手綱で指示を送っても反応が鈍い。三日間の大会初日に行われる種目「馬場」で差をつけるという作戦が崩れた。

 だが、二日目の種目「クロスカントリー」で相棒が奮起。約四キロのコース後半は体力が持たずジャンプの踏み切り位置もバラバラになったが、「気力で走りきって」首位に立った。最終日は、得意の「障害」を完璧にこなし、栄冠をつかんだ。「彼女(プリティーダーリン)のおかげ」と笑う。

 現在はクレインで東京、埼玉、神奈川、群馬の一都三県の指導者統括を任されている。関東を飛び回る多忙な日々だが、現役選手としての夢も健在。目標は二〇年の東京五輪出場だ。「ロンドンで逃したメダルを獲得したい」と意気込んでいる。 

  (牧野新)

<ねぎし・あつし> 秩父市出身。小学3年生の時に乗馬を始める。市立第一中、秩父農工科学高を経て専修大に進み馬術部に所属。主な戦歴は広州アジア大会団体優勝(2010年)、ケンタッキー世界選手権出場(同)、ロンドン五輪出場(12年)。現在は春日部市在住。4歳の長男、2歳の次男と遊ぶのが息抜き。

 

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