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【埼玉】

映画で絵画で福島の母たちの思い描く 県内に避難の河井さんら企画

麻布に親子の姿を描き続ける小林憲明さん=昨年10月、愛知県田原市で

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 原発事故の影響から子どもたちを守ろうとする母親たちの姿を描いたドキュメンタリー映画「小さき声のカノン−選択する人々」(鎌仲ひとみ監督、一時間五十九分)の上映会と、子どもを抱き締める親の姿を描いた絵画展「ダキシメルオモイ」展が十九日、坂戸市文化施設オルモで開かれる。福島県から自主避難中の母親が企画し、坂戸市民らが協力して実現した。当日は鎌仲監督と画家の小林憲明さんのトークイベントも開かれる。(中里宏)

 企画したのは、福島県いわき市から長男(11)、長女(9つ)を連れて県内に自主避難している河井加緒理(かおり)さん(35)と、「ルポ 母子避難」の著者で母親たちのサポートも続けるフリーライターの吉田千亜さん(39)。

 河井さんは避難後、県内の病院で看護助手として働いた。集合住宅では「毎月お金をもらえていいね」などと言う近隣住民の何げない言葉が「胸に刺さった」という。

 先の見えない生活の不安も重なり、めまいに悩まされるようになった。仕事から疲れて帰って子どもの相手を十分できないとき、「子どもを守りたいと逃げてきたのに、私は何をやってるんだろう」と自責の念にかられ続けたという。

 吉田さんが関わる自主避難者の集いには、今年になってから初めて参加する母親もいるという。「自分だけ逃げてきたという罪悪感や、周囲に理解してもらえないのではないかという不安から、避難していることを隠している人もいる。不眠や突発性難聴などに悩む母親も多く、それだけ追い詰められている」と吉田さんはいう。

 河井さんは鎌仲監督の「小さき声−」を吉田さんを通じて知った。福島県やチェルノブイリ原発事故の影響が残るベラルーシで、放射能汚染から子どもを守ろうと葛藤を抱えながら生きる母親や家族の姿を追ったドキュメンタリー。

 自主避難者は三月末で福島県の住宅支援が打ち切られ、難しい選択を迫られている。それでも河井さんは「避難できた自分が、福島の母親たちを黙って見過ごしていいのか。福島に住んでいる母親たちの姿を多くの人たちに知ってほしい」と話す。

 二〇一四年から福島県郡山市の小学生を招き、バーベキューや川遊びなど外遊びの思い出づくりをサポートしている坂戸市の「郡山の子どもたちと遊ぶ会」の武井誠事務局長が、河井さんと吉田さんの願いを聞き、上映会などの主催を引き受けた。

 画家の小林さんは一二年から、東日本大震災の被災地や避難先で親子を取材。縦長の麻布に親子の姿を描き続け、各地で「ダキシメルオモイ」展を開いている。鎌仲監督も小林さんも交通費だけで坂戸市に駆け付ける。

 吉田さんは「子育て世代として、一部の人たちだけが犠牲になっている状況でいいのか。子どもを守りたいという親の気持ちだけは理解してもらえると思うので、一緒に考えてくれる人を増やしたい」と話している。

 上映は午後一時半と午後五時半の二回。入場料千円(学生・障害者五百円)。問い合わせは武井さん=電090(9854)5175=へ。

 

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