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【埼玉】

<揺れる思い 埼玉の避難者>(下)変わる避難者集会 周囲の決断で焦り

毎月開かれている所沢市での避難者交流会。和やかな雰囲気の中で近況を語り合う=所沢市の新所沢公民館で

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 公民館の和室で、二十人ほどが机を囲んだ。二月末に所沢市で開かれた避難者の交流会。月に一度集まり、音楽や料理を楽しむ。

 「まだ落ち着いて住む場所を探せない。避難したばかりのころは前向きだったけど、今になってあれは空元気だったのかなって」

 一人ずつの近況報告で、福島県南相馬市からさいたま市内に避難している女性(68)が言った。ゆったりとコーヒーを飲み、時折笑い声があふれる明るい雰囲気の会。そんな中でふと、六年目の春を迎えた疲れがにじむ。

 「戻ろうかどうかいまだに決められなくて」と語るのは、同浪江町から所沢市に避難している女性(61)。

 避難指示が三月末に解除されるが、地元に帰るかどうかの決断が、まだできない。自宅は東京電力福島第一原発から八キロほど。一時帰宅で、つたが絡まった家を見ると、むなしくなってくる。「全財産をかけてまで戻るべき場所なのか。覚悟を決められない」

 震災から六年。見知らぬ土地で必死に暮らしてきた。でも最近、周りの避難者と話していて不安になることがある。「最初は大勢の人がみんなで困っていた。今は帰る場所を決めたり、こっちで家を買ったり。自分が取り残されていく焦りがある」

     ◇     

 福島県から首都圏への避難者の精神的ストレスがこの一年で高まっている−。交流会を主催する震災支援ネットワーク埼玉(事務局・さいたま市)は二月末、そんな調査結果を発表した。

 双葉町と大熊町、富岡町、いわき市、南相馬市から主に首都圏に避難している人を対象にした精神的ストレスの調査で、「高ストレス状況」とされる人の割合が昨年の33%から51・9%に上がった。震災後五年間は段階的な減少傾向だったが、一気に増えたという。

 「社会の関心が薄れる中で帰還政策が進み、生活支援の打ち切りも具体化することで避難者の不安が増加しているのでは」と調査に関わった早稲田大災害復興医療人類学研究所の辻内琢也所長。「危険信号であり、真剣に対策に取り組まないといけない」と訴える。

     ◇

 所沢での交流会は、普段はそれぞれが悩みを語ることはない。「今日は初めてやりました。ようやくそういう時期になったのかな」と、震災支援ネットワーク埼玉の愛甲裕さん。六年の月日が避難者の心を疲弊させる一方で、六年が過ぎたからこそ生まれてきた信頼関係もある。

 でも、「第二の人生をスタートさせた人はここには来ない」と参加者。住宅支援の終了や避難指示の解除で、県内各地の交流会にも変化がみられる。

 新座市内の交流会は避難者の転居が相次いで参加者が減少し、二月に四年半の活動に区切りをつけた。県内には、ほかにも活動を縮小する交流会がある。

 そんな中で、今こそ交流の場は必要だと愛甲さんは言う。「簡単には決められないことは、ゆっくり決めても良い。一番良い道を選んでもらうために、人とつながる場所は必要だから」 (井上峻輔)

 

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