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【埼玉】

63市町村300公園の放射線測定 深谷の小泉さん夫妻が3年かけて実施

放射線計測器(黄色のバッグ)を手に持ち空間線量を測る小泉さん夫妻=熊谷市の熊谷スポーツ文化公園で

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 六年前の東京電力福島第一原発事故を機に、県内の放射能汚染の現状を確かめようと各地の公園で空間線量の測定をボランティアで続けている夫婦がいる。深谷市で学習塾を営む小泉誠さん(63)と妻の清美さん(63)。この三年間、県内六十三市町村の三百公園を回った。大半は安全な状態を確認したが、二十三の公園で局所的に環境省が除染の目安としている毎時〇・二三マイクロシーベルトを超える「ホットスポット」を約三十カ所発見し、自治体に通報。十九の公園で施設管理者が除染対応する「成果」を挙げたという。 (花井勝規)

 今月上旬、熊谷市北東部にある熊谷スポーツ文化公園の一角。ローラースケート場など多目的広場として使われている場所で、空間線量計を持って歩いていた小泉さんの表情が突然、険しくなった。

 「ポーン、ポーン、ポーン」。首から下げたタブレットパソコンから警報音が鳴り始め、しばらく歩いてもやまない。画面は毎時〇・三三二マイクロシーベルトを示していた。「まだまだ高いな。この辺りは…」

 小泉さんが持ち歩いているのは「ホットスポットファインダー(HSF)」。仲間と約百三十万円で購入した衛星利用測位システム(GPS)連動の高性能なシンチレーション式放射線計測器で、二〇一四年の春からこれで本格的な測定を始めた。

 もともと原発に関心があったわけではない。原発事故前は「週末は筑波山(茨城県)でパラグライダーざんまい」(小泉さん)。それが、事故を契機に「放っておけない。何かしなければ」と思うようになった。子どもとかかわる仕事だけに、なおさらだった。

 簡易な測定器を買い込み、周辺の公園などを測定していたところ、保護者らから「ここも測って」と依頼が舞い込むように。やがて簡易測定器の限界を感じてHSFを購入。県内をくまなく歩いて回るようになった。

 これまで夫婦で見つけた最高地点は昨年五月、さいたま市にある県営の大宮第二公園の一角。駐車場の縁にたまった土を約五年間積み上げていた場所で、地上五センチの高さで毎時一・〇八九マイクロシーベルト、五十センチの高さで毎時〇・六二四マイクロシーベルトだった。

 連絡を受けた大宮公園事務所が県から計測器を借りて計測したところ、地表付近で毎時一・〇七マイクロシーベルト程度、五十センチの高さで毎時〇・四マイクロシーベルト程度あり、ただちに土を取り除いて除染した。「よく見つけてくれた。感謝しています」と事務所の管理担当者は言う。

 小泉さんらが線量が高い場所を連絡しても除染されずそのまま放置されるケースもある。

 よくあるのは、自治体ごとに異なる除染基準が壁になっているケースだ。一四年十月に秩父市の羊山公園内の二カ所の駐車場で地上五センチで毎時〇・三マイクロシーベルト超を測定したと市に連絡したが、市が独自に測定したところ基準値の〇・二三マイクロシーベルト未満だったという。ただ、この時の測定高は一メートルだったとの記録が残っている。

 地表からの測定高は一センチや五センチが主流だが、五十センチや一メートルを採用しているところもあり、ばらばらだ。測定高が地表により近ければ高い値が出やすい。

 県の調べでは、局所的なホットスポットの除染で毎時〇・二三マイクロシーベルトを基準に採用しているのは、熊谷市、川口市など二十二自治体で、県内では最も多い。より厳しい〇・一九マイクロシーベルトを採用しているのが桶川市、朝霞市など十一自治体。これに対し、県やさいたま市など十九の自治体は毎時一マイクロシーベルト。ただ、測定高に応じて弾力的に除染対応する場合もあるという。

 二つ目は「再現性」の壁だ。小泉さんらの機器と自治体の保有する機材が異なるためデータは微妙に食い違う。さらに熟練度がものを言う測定作業に不慣れな職員が当たると、線量が高い場所を見つけるのはかなり難しいという。

 小泉さんは今年一月で県内全自治体での測定を終えた。その結果はホームページ「HSF市民測定所・深谷 放射能見える化計画」で公開しているほか、冊子を希望者に無料で配布している。今は二巡目を始めている。

 小泉さんは「原発事故から六年がたったが、雨水が集まりやすい所など、濃縮ポイントが散見され、まだまだ安心できない。子どもたちが安心して遊べるようになるまでウオッチしていきたい」と話している。

 測定結果についての問い合わせは小泉さん=電090(9829)8558=へ。

 

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