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【埼玉】

<汽笛響く 秩父鉄道SL30年> (中)「コラボ列車」人気加速

秩父のイチゴをPRする「ストロベリーエクスプレス」=1月9日、秩父鉄道熊谷駅で(秩父鉄道提供)

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 「秩父のイチゴです。お一ついかがですか」。車内に甘酸っぱい香りが漂う中、ピンク色のジャンパーをまとった農協キャンペーン隊の女性が乗客らにイチゴを振る舞った。

 一月、秩父鉄道熊谷駅から、一風変わったパレオエクスプレスが出発した。先頭には、秩父の観光農業を応援する女性アイドルの顔写真の入った丸いヘッドマーク。秩父観光農林業協会とのタイアップで、イチゴPRのため仕立てた特別列車「ストロベリーエクスプレス」だ。

 きっかけは、秩父地方で九八センチの積雪を観測した二〇一四年二月の大雪だった。イチゴのビニールハウスが軒並みつぶれ、大きな被害が出た。「地域に生きる鉄道会社として大雪被害からの復興を後押ししたい」(大谷隆男社長)と、秩父鉄道から特別列車を提案し、翌年一月に初めて運行された。

 秩父でイチゴ農園を営む農家三十軒が加入するJAちちぶいちご部会によると、「ストロベリー−」を運行する際のヘッドマークや記念乗車証などはすべて秩父鉄道が無償で提供している。部会長の田口賢司さん(58)は「地域おこしを一緒にやってくれる鉄道側の姿勢に感激した」と話す。

 他の業種と連携したこうした「コラボ列車」は、イチゴなどの農産物だけでなく日本酒やワインなどにも広げ、人気が定着。同様の運行形態はこの三年間で計五十便を数える。

 コラボ列車は、地域貢献のほかに「ひと味違うSLの旅で集客力を高めたい」との鉄道側の思惑もある。アイスキャンディー「ガリガリ君」で有名な赤城乳業(深谷市)とのコラボ列車は、その知名度との相乗効果で子供たちに絶大な人気を誇る。記念乗車証目当てに乗るマニアも多く、ファンからは「秩父鉄道のコラボ列車は種類が多く、大注目」と定評がある。

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 こうしたコラボ戦略の裏側には、維持費のかかるSLの運行を持続可能なものにしていきたいという秩父鉄道の狙いがある。

 秩父鉄道の看板となったパレオエクスプレスだが、単独で利益を稼ぎ出すのは難しい。同社は、SL人気にあやかり、主力の電車利用増や関連事業の長瀞ライン下り、宝登山ロープウェイへの呼び水として活用したいとの戦略を描く。

 SLに期待するのは秩父鉄道だけではない。秩父地域の観光再興を目指す西武鉄道は昨年五月、初めてパレオエクスプレスの西武秩父駅乗り入れを実現させた。「秩父を代表する観光資源であるSLを利用させてほしい」。長年、秩父鉄道に送り続けたラブコールが実った。

 これまで、東京・池袋駅から西武線で秩父に来た乗客がSLに乗るには、西武秩父駅で降りた後、秩父鉄道御花畑駅まで五分ほど歩かなければならなかった。直接乗り換えでSLに乗車できるメリットは大きい。

 昨年五月、パレオエクスプレスが初めて西武秩父駅に現れた際には、駅や沿線が多くの鉄道ファンでごった返した。西武秩父駅−秩父鉄道三峰口駅の臨時便は今年三月までに計八便を運行し「大きな反響を呼んでいる」(西武鉄道運輸部スマイル&スマイル室)。両社は今後も臨時便を運行していくという。

 昨年、長野県・軽井沢で起きたスキーバス事故の影響で、これまで主軸だった安いバスツアーは軒並み料金が高騰し、秩父観光の団体客は減っている。SLを目玉としていたバスツアーも多く、SLへの影響は避けられそうもない。

 秩父地方への団体旅行の企画販売に携わるベテラン業者(66)は「今後は東京方面から鉄道でやってくる観光客対策がカギを握るだろう。西武、秩父両鉄道が連携した周遊コースの設定などに期待したい」と話す。

 

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