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【埼玉】

<ひと物語>手が不自由でも編み物を かぎ針開発・平田のぶ子さん

ユニバーサルかぎ針あみ〜ちぇを開発した平田のぶ子さん=さいたま市で

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 右半身が完全にまひしている女性(45)の右手に医療用バンドで固定された編み物に使うかぎ針。グリップが太く、なめらかな曲線を描く形状は通常のかぎ針とは大きく異なる。針先に左手で毛糸をひっかけるように少しずつ動かす。「編めた!」。女性が思わず発した素直な喜びに手編み講師の平田のぶ子さん(58)=さいたま市見沼区=は「それまでの苦労が吹き飛びました」と話す。

 病気や加齢で手が不自由な人にも編み物を楽しんでもらおうと、平田さんが開発した「ユニバーサルかぎ針あみ〜ちぇ」。発売から一年がたち、通常のかぎ針では編み物ができない人に少しずつ広まっている。

 あみ〜ちぇの特徴は手とかぎ針を固定するバンドと曲線の形状だ。かぎ針を固定することで、指に力が入らなかったり、指が変形してしまった人でも使うことができる。曲線は装着場所にフィットするための工夫で、手の甲に装着することもできるという。

 子どもの頃から編み物に親しんできた平田さん。子育てが一段落した四十七歳のころ、本格的に手編みを学ぼうと、専門学校に通い始め、三年半後には講師ができるまで上達した。

 ある日、結婚前に看護師として働いていた経験と編み物の腕を見込まれて、知人から「半身まひのおばあちゃんに編み物をさせてあげたい」と相談を受けた。平田さんはその女性を介助しながら編み物をさせてあげたが、一人で編むことは難しかった。「手が不自由な人でも使えるかぎ針があれば…」。すぐに開発に取りかかった。

 紙粘土で試作を繰り返した。指にはめ込む形からスタートしたが、うまくいかない。何度も失敗を繰り返した。「私じゃなきゃできない」と使命感が背中を押した。

 試行錯誤を重ねる中、夫の末期がんが発覚。開発を中断し、懸命に看病したが、半年後に亡くなった。悲しみに暮れたものの「かぎ針の開発はおまえにしかできない。絶対に世に出しなさい」と病床で言ってくれた夫の言葉を思い出した。

 夫の死から半年、開発を再開した。創業などについて学べるセミナーに通うほか、百回ほど試作を繰り返し、昨年六月に「あみ〜ちぇ」を発売した。

 これまで約七十本が売れた。事故で右肘から先が義手の五十代女性は「編み物ができるようになり、生活が変わった」と感想を寄せてくれた。平田さんは「手が不自由であきらめていた人にもう一度、編み物を楽しんでほしい。あみ〜ちぇでその人の人生が少しでも明るくなれば」と話している。 (西川正志)

<ひらた・のぶこ> 1959年生まれ、長野県岡谷市出身。都内の看護学校を卒業後、東京大医学部付属病院に勤務。結婚を機に退職した。開発したあみ〜ちぇはスタンダード(5800円)、プレミアム(2万7000円)=ともに税抜き=の2種類を販売。あみ〜ちぇのホームページで注文できる。問い合わせは平田さん=電050(3735)9569=へ。

 

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