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【埼玉】

<見て学んで楽しむ 彩の国 産業観光> (1)和ろうそく HAZE(川越市)

 「ものづくりの現場を見て、学んで、楽しんでみたい」−。そんな見学者を受け入れる工場や工房が、県内で増えている。こうした取り組みは「産業観光」と呼ばれ、外国人観光客の関心も高い。二〇一九年のラグビーワールドカップ、二〇年の東京五輪・パラリンピックで県も競技会場となり、国内外からやって来る観戦者に埼玉をPRするビッグチャンスだ。伝統の和ろうそくや秩父銘仙、草加煎餅、調味料、ステンドグラス、「ガリガリ君」…。記者がお薦めする産業観光の「旅先」を紹介する。

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溶かしたハゼろうを芯にかけ、手で整える作業を繰り返す。この作業場で和ろうそく作りが体験できる=川越市で

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 観光客でにぎわう「小江戸川越」。蔵造りの町並み近くにあるレトロな町屋に和ろうそく「HAZE(ヘイズ)」がある。

 「このままでは和ろうそくがなくなってしまうと思ったのが、この世界に入るきっかけでした」。代表の戸田佳佑さん(36)は言う。

 店内に入ってすぐにパステルカラーやグラデーション(階調)を付けたおしゃれな和ろうそくが目に入る。じっくり見ていくお客さんには若い女性が多い。

 和ろうそくは、パラフィンなどを原料とする洋ろうそくと違い、ウルシ科の櫨(はぜ)の実を蒸して圧搾して得られる純植物性の油脂を原料とする。イグサ、和紙、真綿で作る芯が太いのも洋ろうそくとの大きな違い。芯が太いので炎も大きいが、すすが少なく、消したときに洋ろうそくのように嫌なにおいが出ない。一番の特徴は溶けたろうが、垂れてこないことだ。「特徴を説明すると、価値のあるものだと分かってもらえる」と戸田さん。

 戸田さんは奈良県出身。お盆で滋賀県にある母親の実家に帰省すると、近所の店で和ろうそくを買うのが当たり前だった。

 東京都内のイベント会社で映像制作の仕事をしていたとき、同僚の寺沢勇樹さん(34)と和ろうそくを調べる機会があった。「国会図書館にも文献がわずかしかなく、衰退していることが分かった。十年後にはなくなってしまうのではと思った」と言う。寺沢さんが和ろうそくを知らなかったことにも驚いた。

オリジナルデザインの和ろうそく

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 「和ろうそくを自分たちで作るきっかけになったのは東日本大震災でした」と戸田さん。都心で帰宅難民となり、自宅にたどり着いてから津波の映像を見た。「人生には限りがあり、明日の保証はないと痛感した。映像制作の仕事に情熱を持っていたが、世の中に必要とされているのか。自分の喜びだけでなく、価値のあるものを作りたいと人生を見直した」

 それから、川口市の一軒家で寺沢さんと和ろうそく作りに取り組んだ。「初めは弟子入りしようと思ったが、作っているところは日本に十数軒しかなく、どこも弟子を取る余裕はなかった」。インターネット上にある動画を見ながら試行錯誤を続け、クラフトワークのイベントへの出展を始めた。

 「和ろうそくを知る人を増やしていけば、残していけるだろう」と考えた二人は、二〇一五年七月、今の場所に拠点となる店を出した。知人の坂本栄美さんもパッケージや燭台(しょくだい)のデザイン担当として加わった。より和ろうそくを知ってもらいたいと、店内で工房の作業風景を公開し、ろうそく作りの体験コースも用意した。

 ターゲットは二十代後半から三十代前半。プレゼントやおみやげ、結婚式の引き出物にも使えるようパッケージもデザインした。

 「現代は目まぐるしいサイクルで働いている人がほとんどだと思う。和ろうそくをともして、何も考えずにぼーっとする時間を持つのもいいのでは」と戸田さんは言う。 (中里宏)

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<和ろうそく HAZE> 川越市元町1の12の6。営業時間は午前11時〜午後6時。和ろうそく作り体験は要予約。3コースあり、燃焼時間60分の白い和ろうそく1本が1000円。燃焼時間60分の色つきの和ろうそく2本が2000円。燃焼時間90分の階調の和ろうそく2本が3000円。和ろうそくは40度で溶けるので手作りでも熱くない。予約は、電070(5563)4862へ。水曜定休。

 

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