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【埼玉】

<見て学んで楽しむ 彩の国 産業観光> (8)ステンドグラスバロック(さいたま市) 

世界平和記念聖堂のステンドグラス修復作業を進める臼井さん=さいたま市で

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 日が差し込むと窓に女神や風景などが浮かび上がり、幻想的な世界観を演出するステンドグラス。国内のステンドグラス工芸家の第一人者である臼井定一さん(70)は、さいたま市西区に本社工房「ステンドグラスバロック」を構える。小さな体育館ほどもある工房で職人が行うのは正確かつ繊細な作業。普段は立ち入り禁止だが、年に数日間の「オープンファクトリー」の時だけ一般に公開される。

 フランスのノートルダム大聖堂やドイツのケルン大聖堂…。キリスト教の教会とともに発展したステンドグラス。国内でも近年、個人宅や公共施設に飾られることが多くなった。バロックには年間百件を超える製作依頼が寄せられる。

 主に使われるのは色ガラスと鉛線。さまざまな形にカットされたガラス同士は鉛線でつなぎ合わされ、ハンダで固定される。

 臼井さんがステンドグラスに魅了されたのは四十年ほど前。米国の教会で見た聖母マリア像の美しさに息をのんだ。現地の工房に通い、作り方を学んだ。

 数カ月後に帰国。友人らと工房を開設した。「基礎しかできていなかったけれども国内に工房が少なく、依頼は来ると思っていた。でもステンドグラスが知られていなかった」と笑う。

 「日本でステンドグラスを広めることが重要」とまずカルチャー教室を開き、国内各地を回った。「作品製作よりも講師役の方が多かった」と当時を振り返るが、自らの腕磨きは怠らなかった。欧州や米国の工房に毎年のように出向き技術を研究、会得し続けた。

工房併設のギャラリーに展示されている作品=さいたま市で

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 徐々に依頼が増え、これまでに数千の作品を製作。二〇一三年の「あいちトリエンナーレ」では北野武さんの作品を原画に製作するなど日本有数のステンドグラス工芸家として知られるようになった。

 現在工房で進んでいるのは、国の重要文化財・世界平和記念聖堂(広島市)のステンドグラス修復作業。

 原爆犠牲者を弔うために一九五四年に建設されてから六十年以上。風雨にさらされた計八百八十八枚の三割超に修復が必要だった。文化財の大規模な修復は初めての挑戦。「直した後も古く見せないといけない」と難しさを語る。

 建設当時に近い状態を残すため素材の取り換えは最小限に抑える。割れたガラスは特殊な接着剤でくっつけ、絵の具のはげた部分を塗り直す。ガラス一枚に一カ月以上を費やすこともあった。六月ごろに全ての作業が終わる予定だ。

 次回の「オープンファクトリー」は四〜五月中の開催を予定。同聖堂の修復作業を公開するのは最後になる。修復に携わった職人が作業内容を説明する。

 臼井さんは「文化財の修復を見られることはめったにない。貴重な機会なのでぜひ足を運んでほしい」と来場を心待ちにしている。 (牧野新)

 =おわり

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<ステンドグラスバロック> さいたま市西区島根206。今年のオープンファクトリーの開催日など詳細は未定。入場無料。工房併設で作品を展示するギャラリーは、常時自由に見学できる。問い合わせは、電048(778)8071へ。

 

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