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【埼玉】

<ひと物語>ボディービルダーと両立 県警職員・須江正尋さん

県警の一般職員として働きながら現役のボディービルダーとして活躍する須江さん。圧倒的な筋肉量をほこる=さいたま市で

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 脇の下から大きく張りだした背中、メロンのように丸く発達した肩…。昼休みのトレーニング施設で、筋トレに励む男たちの視線を集める県警の一般職員須江正尋さんは、現役のボディービルダーだ。五十歳にしてなお、毎日厳しいトレーニングを重ねている。

 本格的に筋トレを始めたのは高校二年のころ。身長一五五センチ、体重は五〇キロに届かず、恵まれた体格ではなかった。ラグビー部の友人に誘われて、バーベルを握った。

 最初はベンチプレスで五十キロも上げられなかった。トレーニングに励むと体はどんどん変わり、三年の時には制服のボタンがはち切れんばかりの大胸筋を手に入れた。大学ではボディビル部に。三、四年生の時には大学生のボディビル全国大会で優勝。当時、二連覇の達成は初めてだった。

 卒業後、スポーツクラブでの勤めを経て、「厳しい環境で、正しいことができる」と県警の警察官、一般職員それぞれの採用試験を受験し、両方とも合格。採用担当者からは警察官になるように勧められた。

 だが、真剣に考えるうちに恐怖感が出てきた。当時、在籍したジムにはプロ格闘家たちもいたが、単純な力は自分が圧倒的に強かった。警察官になれば、犯人制圧とはいえ、桁外れの腕力を人に向けることになる。「もし歯止めがきかなかったら…」。そんな思いから、一般職員を選んだ。

 採用後は県警本部の各課や署で、警察官の仕事を支える庶務などに従事。ボディービルでは日本選手権で三位に輝いたが、結婚を機に二十九歳で引退した。

 母校の後輩を指導することはあっても、本格的なトレーニングは一切しなかった。家庭と仕事を優先したからだ。三十四歳の時、妻から「何でやりたいことをやらないの。若い人たちに負けるのが怖いの」と言われ、復帰を決意した。

 家庭も仕事も競技も全力で取り組む。そのために自宅に器具をそろえ、帰宅後にトレーニングに励む毎日。一年後には日本選手権五位と見事に返り咲いた。

 仕事では日々の業務に加え、職員向けの機関紙で、忙しい警察官でも簡単にできるトレーニング方法を紹介する記事を連載したり、配属先の署の朝礼で専門知識を盛り込んだスクワットを教えたりするなど、職員の健康を支える活動もしてきた。

 「家庭、仕事、趣味はかけ算みたいなもの。すべてに全力を傾ければ、良い結果は出る」と何事もストイックな須江さん。秋の日本選手権での優勝を目指し、すでに厳しい体作りを始めている。 (西川正志)

<すえ・まさひろ> 1967年生まれ、川口市出身。引退から復帰後の2008、09年の日本ボディビル選手権で2位に輝くなど日本のトップ選手として長年活躍。17年の同大会では9位だった。トレーニングだけでなく、ゆで卵や鶏ささみなどタンパク質中心の食生活を心がけるなど、厳しい節制も欠かさない。妻と2人暮らし。

 

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