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【埼玉】

「ASUKA」広がれ全国へ さいたま市、小中学生に心肺蘇生法指導

公開授業で心臓マッサージを練習する児童たち=さいたま市西区の馬宮東小学校で

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 さいたま市の全小中学校では、自動体外式除細動器(AED)などによる心肺蘇生法を子どもに教える授業が行われている。きっかけは2011年に起きた女子児童の突然死。その後に作られた市の事故対応テキストは、児童の名前から「ASUKAモデル」と名付けられた。今、市の指導法を全国の学校へ広げる取り組みが進む。 (井上峻輔)

 心臓に見立てたハート形の練習器具を、児童が懸命に押す。「肘は真っすぐ伸ばして」と男性教諭の声。友達が心肺停止した時を想定した心臓マッサージの練習。目標は二分間だが、疲れてペースが落ちてくる。

 十日にさいたま市立馬宮東小学校で行われた公開授業。日本AED財団(東京都)が主催し、全国の学校現場や医療、消防の関係者二百人ほどが見守った。

 五年生約三十人が、倒れた友達の反応を確認することや、周囲にAEDを持ってくるように頼むことを学んでいく。心臓マッサージを終えた児童たちに、男性教諭は「救急車が到着するまで一人で続けるのは大変だから、応援を呼んで交代でやることが大切」と呼びかけた。

 さいたま市の全ての小学校では、このような授業が五年生から行われる。中学でも学習し、中一の段階で全ての生徒がAEDを使えるようにすることが目標。いずれも学習指導要領にはない市独自の取り組みだ。

 きっかけは一一年九月。市立日進小学校六年の桐田明日香さんが、駅伝の練習中に心停止して亡くなった。救急隊到着までの十一分間、AED使用などの心肺蘇生は行われなかった。

 市はその時の反省から、教員に加え、第一発見者になることが多い子どもにも心肺蘇生の指導を始めた。新たに作成した事故対応テキスト「ASUKAモデル」には、意識や呼吸の有無が分からない場合にも迷わずAEDを使うよう明記した。

 この日の授業後のシンポジウムで明日香さんの母寿子さん(47)は「明日香は何を願うのか。主人と話し合った答えは再発防止への願いだった」と語った。AED財団とともに、小学校での救命教育やASUKAモデルの普及に努めている。

突然死の再発防止への思いを語る桐田寿子さん

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 「理解は広がってきた」と語るのは、当時のさいたま市教育長で現在はAED財団理事の桐淵博さん(64)。昨年改訂された中学校の学習指導要領では、心肺蘇生法についての表記が「理解を深める」から「身に付けることができるように指導する」に変わった。付属の解説でも、AEDを「必要に応じて触れる」から「実習を通じてできるようにする」になった。

 ただ、小学校の指導要領に規定がない状況は変わらない。早すぎるという意見や、指導する教員側の不安は根強い。この日の公開授業は実際の指導現場を見てもらうために初めて行われ、シンポジウムでは桐淵さんらが「大人を呼ぶなどできることからやるように教える」「医療機関や消防との連携が重要」と伝えた。

 「小学校の学習指導要領に記載されることが目標。まずは各地の自治体で授業に取り入れてほしい」と桐淵さん。寿子さんも「命のバトンを協力して救急隊につなげられる社会になってほしい」と訴えを続ける。

 

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