東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 埼玉 > 記事一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【埼玉】

首都圏の避難者調査 隠れたSOS察知へ 支援団体、質問簡略化

 福島第一原発事故から間もなく七年。避難者支援団体「震災支援ネットワーク埼玉」(SSN)などが行う首都圏避難者状況調査が本年度、大きく簡略化された。例年は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性を膨大な質問数で調べていたが、数問の質問でうつ病の可能性を調べる調査に変更。回答者の負担を減らすことでアンケートの回収率を上げ、より多くの避難者のSOSを察知することに重点を置いた。 (井上峻輔)

 福島県から関東地方に避難した人の20%にうつ病の可能性がある−。先月二十四日に東京都の早稲田大で開かれたシンポジウムで、SSNと同大が二〇一七年度共同調査の中間発表をした。

 うつと金銭不安や相談相手の不在に相関関係があることは示されたが、前年度まではあったPTSDの可能性がある避難者の割合は明らかにされず、ややあっさりとした内容。中心となった辻内琢也教授は「今までよりも非常に簡略化した調査にした」と明かす。

 共同調査は一二年度から行われている。一六年度の調査ではPTSDの可能性のある避難者の割合が前年度の32・9%から51・9%に大幅に増えていて、避難指示の解除や住宅支援の打ち切りで精神的に追い詰められていく避難者の実態が明らかになった。

 そんなPTSDの調査を削った理由を辻内教授は「アンケートの回収率を上げようとした」と説明する。一六年度は全十九ページの冊子にまとめられた二百以上の質問に答える必要があり、回収率はわずか15%ほど。今回のアンケートは見開き二ページだけで、回答の手間は格段に減った。

 背景には、数字上の研究だけではないアンケート本来の狙いがある。SSNの愛甲裕事務局長(58)は「一番の目的は避難者からSOSを出してもらうことだ」と強調する。

 アンケートには回答者が悩みを具体的に書き込む欄があり、SSNが支援が必要な避難者を知るために役立ててきた。回収率が上がれば、今まで隠れていた避難者の声を把握できる。

 実際、今回の簡略化によって「これくらいなら答えられる」と初めて回答してくれた避難者も多いという。千葉県に避難している五十代の女性もその一人。住宅ローンの支払いや子どものいじめで追い詰められていた。今はSSNを通じて臨床心理士や司法書士が支援に当たっている。

 愛甲さんは「最近は『死にたい』と書く人も増えてきた」と明かす。誰にも相談できずに悩みを抱え込んでいる人はまだまだいるとみられ「一人でも多くのSOSを知り、対処していきたい」と語る。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報