東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 埼玉 > 記事一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【埼玉】

<ひと物語>農ある暮らしを実践 「雨読晴耕村舎」代表・後藤雅浩さん

「農ある暮らし」を実践する後藤雅浩さんと“相棒”のヤギ=羽生市で

写真

 羽生市の中心市街地から車を走らせると、程なく田園風景が広がる。雑木林に囲まれた敷地に立つ古民家を訪れると、庭先で飼われているヤギの親子の「フーヤ」と「アーヤ」が草をはみながら出迎えてくれた。

 古民家は、農場と一級建築士事務所を営む後藤雅浩さん(53)の自宅で、代表を務めるNPO法人「雨読晴耕村舎」の活動拠点でもある。ヤギからはミルクがとれる。雑草のほか、残飯を食べてくれ、ごみがなくなる効果もあるという。

 雨読晴耕村舎は都市近郊での「農ある暮らし」を唱え、持続可能な循環型社会や子どもたちが情緒豊かに育つことができる環境などを目指している。

 古民家に移り住んだのは一九九八年。その三年前の阪神大震災がきっかけだった。当時は東京都内の会社で高層ビルの設計監理に従事。地震から一カ月ほど後、調査のため兵庫県を訪れた際、都市のシステムの脆弱(ぜいじゃく)さを目の当たりにした。「高層ビルは水が来なくなると、トイレができなくなり、無用の長物になってしまう」

 脆弱で高価なシステムに投資し続けていく在り方に疑問を持った。会社を辞めて羽生市で建築士事務所を構える一方、コメや野菜を栽培、ジュースなど農作物の加工を手掛けた。

 農ある暮らしを十数年実践し、自身の経験や知識を「発信してもいいかな」と思い、NPO法人を立ち上げた。種まきや田植えをする「家庭稲作講座」は毎年、十人ほどが受講。「自分でコメを作ってみたい」と東京などから会社員や医師らが参加する。トラクターなど大型の機械は使わず、「自分で食べる分を自分で作る感じですかね」。

 飼っているヤギは毎春、子どもを産み、教育や地域交流などに役立っている。

 非常勤講師を務める羽生市の埼玉純真短期大学にはヤギの親子を連れて行き、環境と保育指導法の授業で保育士や幼稚園教諭を目指す学生に接してもらっている。今年は雌のヤギが生まれたら、さいたま市の児童福祉施設に譲渡する予定もある。

 加須市の鋼板加工販売会社「石原商事」加須事業所から三年前に新事務所の設計を依頼された際には、工場敷地の一部をヤギが飼える緑地にした。夏には地元の音楽家らによる「ヤギのコンサート」を開催。飼育中のヤギは雑草を食べる以外に顧客や地域の人を癒やす効果ももたらしている。

 自身の活動は「ローテクでコストがかからない。誰でもできますよ」と控えめに言う。今後も「自分がやってきたことが周りの人に伝われば」と活動していく。 (中西公一)

<ごとう・まさひろ> 東京都生まれ、羽生市在住。京都大卒業。埼玉純真短大非常勤講師。農場、農作物加工・直売所、建築士事務所を営む。NPO法人「雨読晴耕村舎」の代表で、今年も家庭稲作講座(4〜12月)やヤギのコンサート(8月)を開く。問い合わせは雨読晴耕村舎のEメール=udokuseikousonsya@gmail.com=へ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報