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【埼玉】

<ひと物語>老舗の蔵で感性発揮 佐藤酒造店杜氏・佐藤麻里子さん

「プレッシャーはあるが、仕込みは楽しい」と話す杜氏の佐藤麻里子さん

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 関東屈指の梅林として知られる「越生梅林」(越生町)のすぐ近くに、きれいな白壁の建物が並ぶ佐藤酒造店(佐藤忠男社長)がある。江戸時代の一八四四年創業。小規模ながら、越辺川(おっぺがわ)の伏流水で醸した日本酒「越生梅林」は、全国酒類コンクールで多くの受賞歴を誇る。

 老舗酒蔵で二〇一五年から杜氏(とうじ)を務めるのは、社長の長女佐藤麻里子さん(27)。全国でも数少ない女性杜氏の一人だ。「高校時代から直売店で手伝いをしていた。リピーターのお客さんに『おいしいね』と言われると、うれしかったですね。自然と蔵の仕事に興味を持つようになった」と話す。

 杜氏は、蔵の酒の特徴を決めるだけでなく、どの種類をどれだけつくるのか計画を立てる製造責任者でもある。佐藤さんが杜氏を目指そうと決めたのは大学に入ってから。県酒造組合が後継者育成のために実施している「彩の国酒造り学校」にも二年間通って醸造技術を学んだ。

 二〇一五年、杜氏になってから初めて仕込んだ酒が完成したときは「お客さんに提供できる製品が無事にできたとほっとした。味をみるほどの余裕はなかった」と率直に語る。それでも自分の名前を付けた純米吟醸酒「まりこの酒」は、女性向けの狙い通り、口に含むとふくらみがあり、後味が軽い酒に仕上がった。

 まりこの酒は半透明の細長い瓶に薄いピンクで梅の花をあしらった日本酒とは思えないおしゃれなラベル。女性らしい感性を最初の仕事から発揮した。

 杜氏になって三年目の昨年五月、初めて出品した「越生梅林」の大吟醸が全国新酒鑑評会で銀賞を獲得した。初挑戦での受賞だが「銀を取れるなら、金を取りたかった」と言う。それでも今はコンクールにこだわっていない。「賞を取るお酒と消費者がふだん飲みするお酒は絶対違うからです。私はふだん飲みで手に取ってもらえるお酒がいい」。コンクールに出品しなくても、いい日本酒造りを目指す気持ちに変わりはないからだ。

 佐藤さんを含め、蔵人は全員二十代に若返った。機械化された大手酒造会社と違い、洗米から醸造過程を一人で仕切る。最も気が抜けない麹(こうじ)づくりでは、夜中でも二時間おきに起きて、米のふくらみ具合や温度を見て手を入れなければならない。

 「(麹・酵母という)生きものを扱う仕事なので休みはありません。寒い場所での作業なので人間にとってはつらいですが、楽しいですよ」と笑顔を見せた。 (中里宏)

<さとう・まりこ> 1991年生まれ。両親、祖父母、弟の6人家族。「若い人たちで日本酒の伝統と文化を守っていきたい」と言う。弟の徳哉(かつや)さんも大学卒業後、後継者として老舗を一緒にもり立てる。今は本数限定の「まりこの酒」や特別純米酒などがおすすめという。問い合わせは佐藤酒造店=電049(292)2058=へ。

 

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