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【埼玉】

平地林の落ち葉で堆肥 伝統の循環農法を後世に 記録映画「武蔵野」完成

ボランティアも協力する「ヤマ」の落ち葉掃き(映画「武蔵野」製作委員会提供)

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 落ち葉を堆肥に利用する江戸時代からの循環農法を守る農家の営みと、それを支える「ヤマ」と呼ばれる平地林の美しい四季を描いた原村政樹監督(61)、川越市在住=のドキュメンタリー映画「武蔵野」(111分)が完成。14日から川越スカラ座で公開される。自然を生かし、自らも生かされてきた先人の知恵の合理性や、人間と自然との共生の大切さを訴える。 (中里宏)

 映画は朝日を浴びて輝く紅葉のヤマの風景から始まる。年が明け、家族総出で集められた落ち葉は手間をかけて堆肥になる。落ち葉堆肥で不足するカリウムは伐採した枝などを燃やした木灰で補う。この地で三百年以上続けられてきた土づくりの一端だ。

 登場する農家は、昨年、日本農業遺産に認定された「武蔵野の落ち葉堆肥農法」に取り組む三芳町のサツマイモ農家・伊東蔵衛さん、仲間たちとヤマの保全活動にも取り組む所沢市の横山進さん、両親や妻と作業に取り組む川越市の農業後継者・大木洋史さん。持ち主の高齢化などで荒れたヤマの管理に取り組むボランティアたちの活動も紹介する。

 伊東さんは、落ち葉堆肥の発酵熱を利用した「踏み込み温床」や地下三メートルに掘った種イモ保存用の穴蔵など、伝統農法に徹底的にこだわる。温床には、父親が四十年前に麦わらで作った「からぶた」と呼ばれる保温材を今も大事に使い続けている。

 作業の合間、伊東さんが語った「先祖があって今があるんだという考え方。父親は『農家は百年一日だ』と言っていた。俺が絶やすわけにはいかないなという単純な気持ち」との言葉が印象的だ。

 手入れがされなくなって荒れ果てたヤマや、重い相続税負担などで売られてヤマが資材置き場などに変わっていく現状も映し出している。

 原村監督は農業など第一次産業を主題にしたドキュメンタリー映画を撮り続け、前作の「無音の叫び声」(二〇一五年)で二回目の農業ジャーナリスト賞を受賞している。「大都市近郊でこれだけの平地林が残り、文化的な営みも続いているところは世界でもここだけ。人類の遺産として三百年後にも残るようになってほしい。少しでも役に立ちたい」と話している。

 川越スカラ座での公開は二十七日まで。上映は午前十時半、午後四時半の二回。

 

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