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【埼玉】

サクラソウ自生地 株数減少 埼玉大・荒木准教授に聞く

自生地を守る会メンバーの案内でサクラソウなどを楽しむ人たち=さいたま市で

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 国の特別天然記念物、田島ケ原サクラソウ自生地(さいたま市桜区・桜草公園)でサクラソウが見頃を迎え、十五日には自生地で「まつり」も開かれる。一方で自生地の株数はピーク時の三分の一以下にまで減少し、心配する声も上がる。植物生態学が専門で市の調査専門員として自生地の保全に取り組む荒木祐二・埼玉大准教授(41)に、減少の原因や対策を聞いた。 (田口透)

 自生地内の株数は二〇〇三年のピーク時には二百三十四万八千株だったが、年々減少し一四年には百万株を下回り、昨年は七十一万六千株にまで落ち込んだ。

 荒木准教授は原因について(1)湿地の乾燥化(2)競合種の分布拡大(3)ポリネーター(花粉媒介者)不足−を挙げる。

 乾燥化は自生地のそばを流れる荒川の水量が減り、氾濫が起こりにくくなったことが原因ではないかと指摘。さらにノウルシ、コバギボウシなどの競合種が分布を拡大、特に乾燥に強いコバギボウシがかなりのスピードで増え、サクラソウを圧迫しているという。

 媒介するマルハナバチも自生地ではほとんど見られないという。サクラソウは地下茎でクローン成長するが、本来の花粉媒介がないと遺伝的多様性が維持できず、環境変化で突然消滅する恐れも指摘されている。

 対策として、乾燥化の食い止めは現状では難しいため、競合種の除去実験を一昨年から進めている。準絶滅危惧種のノウルシはサクラソウの周囲で効果的な除去、コバギボウシは全除去を行うが、生命力が強いのが課題という。また、ポリネーター対策では、周辺の里山、林などの植生をもともとの状態に戻すことも必要と話す。

 株数を増やす積極策として、冬の野焼き前にサクラソウの種子を集め、野焼き後に自生地にまくなどのアイデアも検討されている。

 荒木准教授は「状況が許せば、自生地の生態系を守るため遺伝子レベルの多様性を調査し、ドローンを使ったサクラソウ分布の精密な分析にも取り組みたい」と話す。

 しかし、保全のための予算は限られており、ボランティアの「田島ケ原サクラソウ自生地を守る会」や埼玉大の学生らに頼る部分も大きい。

 二〇二〇年は、自生地が国の第一号として天然記念物に指定されてから百年。県花、市花としても親しまれているサクラソウだが、自生地の株数減少をここで食い止めることができるのか−。行政、民間が一体となったいっそうの取り組みが必要とされそうだ。

 さくら草まつりは十四、十五日は市役所、十五日は自生地の桜草公園で各種イベントが行われる。

<あらき・ゆうじ> 山形県出身。宮城教育大、横浜国大大学院卒。2011年から埼玉大教育学部准教授。専門は植物生態学。里山の調査・保全、海外ではカンボジア熱帯淡水域の湿地植生の調査、環境マネジメントにも取り組んでいる。

 

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