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【埼玉】

<ひと物語>産後の妻に気遣いを 全国で「父親学級」講座・渡辺大地さん

著書を手にする渡辺さん=所沢市で

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 「産後の妻は全治一カ月のけが人です!」

 県西部の産科医院で四月、間もなく親になる男女を対象に行われた出張講座。講師の渡辺大地さん(37)が男性に向け、強いトーンで切り出した。

 渡辺さんは産前産後の家族をサポートする会社「アイナロハ」の代表取締役。家事代行や「父親学級」と名付けた出張講座を年百回ほど開催する。講座を通じ、父親や将来父親になる男性たちに「産後の約一カ月間、妻の傷口がふさがらないのをご存じですか。その時、休ませる手だてを考えていますか」などと語りかける。

 渡辺さん自身、育児に精通し、母親の産後の体調変化に敏感だったわけではない。きっかけは七年前。東日本大震災の影響で当時勤務していた出版社の経営が傾き、退職を余儀なくされたころ、二人目を身ごもった妻琴美さん(36)が妊娠三カ月で破水。無事出産したが、体調不良に陥った琴美さんは医師から二カ月間の絶対安静を言い渡された。

 「初めての家事で、何をどうしたらいいのか…」。戸惑いつつも、親族の助力も得ながら、二人でなんとか乗り切った。大変だった時期を振り返り、琴美さんに「(家事代行の)会社をつくっちゃえば解決するんじゃない」と言われたのが起業のきっかけになった。

 しかし「家事代行にお金を払う必要があるのか」と拒否感を示すお父さんが予想外に多かった。「産後のお母さんの体調変化を知る機会がお父さんにはないんですね。そうしたら、また妻から『お父さん向けの研修をやってみれば』」と提案されたのが、父親学級につながった。

 二〇一二年八月にスタートした父親学級は、おむつ替えの練習はしない。妻の気持ちに寄り添い、夫婦で育児を始めることに重点を置く。ユニークなコンセプトが評判を呼び、受講者は昨年七月、通算一万人を突破。講座会場は県西部が中心だが、リクエストがあれば全国に足を延ばす。

 アイナロハは主に渡辺さんが出張講演、琴美さんが約六十人のスタッフを束ね「ままのわ」と名付けた家事代行業務を担う。

 琴美さんが仕事に出る平日は渡辺さんが子どもたちの世話をしながら事務作業をし、渡辺さんが講演に赴く週末は琴美さんが家事を担当する。育児も仕事も二人三脚。二人の生きざまが共感を呼び、受講者を増やしている。

 「これからは中高生向けの父親学級を突き詰めていきたい。結婚するしない、子どもをつくるつくらない、それにLGBTの方もいて、たくさんの引き出しをつくる必要がある」。問い合わせはアイナロハのホームページ(名称で検索)から。(加藤木信夫)

 <わたなべ・だいち> 1980年、札幌市生まれ。明治大卒業後、出版社勤務などを経て、2011年12月に産前産後の家族をサポートする(株)アイナロハを所沢市に設立。札幌市立大看護学部非常勤講師。18年3月まで本紙生活面に「オトコの母親学級」を連載。著書に「産後が始まった!」など。家族は妻琴美さん(36)と長男(8)、長女(5)、次女(1)。

 

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