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【埼玉】

<ひと物語>がん検診受診 呼び掛け くまがやピンクリボンの会代表・栗原和江さん

「生命の授業」で乳がん検診の重要性を訴えるくまがやピンクリボンの会代表の栗原和江さん=熊谷市で

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 「私は十一年前、がんの告知を受けました」

 四月中旬、熊谷市のNPO法人「くまがやピンクリボンの会」が市内で開いた「生命(いのち)の授業」。代表の栗原和江さん(58)は自らの体験を交えながらがんの原因や予防法を聴衆にやさしく語りかけた。

 同会が昨年度、県内各地で開いた授業は小中学校を中心に四十三回。授業を始めた二〇一四年度から計百三十三回を数える。受講生は児童生徒のほか、教員や保育士、医療関係者などだ。事業委託された熊谷、行田両市以外は手弁当の出前講座だ。   

 授業は栗原さんのほか、乳がんと闘病中の会員や小児がんで七歳の娘を亡くした会員らが登壇し、がんについて深く考える機会を提供している。栗原さんが繰り返し訴えるのはがん検診の大切さだ。「がんは早く見つけて、早く治療すれば治る病気でもあるのです」

 乳がんの切除手術を受けたのは〇七年春だった。前年の夏、自己触診で乳房にしこりを見つけ、病院に行くと「乳腺炎だ」と診断された。次の病院で「良性の腫瘍」と言われ、経過観察になったものの七カ月後、医師から「悪性に変わった」と宣告された。腫瘍の大きさは当初の三倍になっていた。

 手術の翌年、同じ悩みや不安を抱えるがん患者仲間ら七人でくまがやピンクリボンの会を結成。マンモグラフィー検診などの乳がん検診を受けてこなかった痛切な自己反省から、乳がんの早期発見、早期治療を進めようと、乳がん検診受診率の向上を会の活動の中心に据えた。

 その後、会員は拡大し、がん患者や体験者らの登録者は現在九十人。賛助会員を含めると百六十二人の規模に。活動の幅も生命の授業を軸に、乳がんセミナーやピンクリボン・デーの開催、患者同士の茶話会開催などに広がった。

 啓発活動の効果もあり、結成当時7・5%にすぎなかった熊谷市内のマンモグラフィー検診率は昨年、27・4%にまで伸びた。一六年にはNPO法人化し、全国有数の活動実績を誇る団体として知られている。

 昨年暮れに仲間の女性(48)が十二年間の闘病の末に亡くなった。栗原さんが見送った七人目の会員となった。女性は「履歴書に『がん闘病中』と記入するとすべての会社に落とされた」と嘆いていたという。

 「医療の発展で最近は『がん=死』ではなくなってきているのに、患者への差別や偏見は依然として強い」と唇をかむ。「命が続く限り、がん教育や啓発に全力を尽くしたい。それが私に与えられた使命であり、死んでいった仲間に報いる道だと思う」と決意を新たにしている。 (花井勝規)

<くりばら・かずえ> 1960年、熊谷市生まれ。金属メーカー勤務を経て、地元のタウン誌記者、編集長を20年間務めた。2006年に乳がんが見つかり、翌年手術を受けた。08年、「くまがやピンクリボンの会」を結成し、代表に就任。問い合わせは同会=電080(8908)2108=へ。

 

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