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【埼玉】

<ひと物語>発達障害者の支えに NPO法人「チャイルド・ギフト」代表理事・吉野春江さん

「チャイルド・ギフトの活動が、私と息子の幸せにもつながる」と話す吉野さん=川口市で

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 川口市にある地域ラジオ局「FM Kawaguchi」のスタジオ。吉野春江さん(47)とDJ金谷美奈子さん(43)が真剣な面持ちでマイクに向かっていた。毎週放送の番組「Dear・Mother 発達障害を知る」の収録現場だ。

 「私は例えば、何かを『好きなようにやって』と指示されると、どうすればいいか分からなくなる。普通の人が『普通にできる』と思っていることでも、苦手な場合があるんです」

 リスナーにそう語る吉野さんは自身が発達障害者だ。中学一年の一人息子(13)にも発達障害がある。「世の中の発達障害の方に自分の特性を知ってもらい、周囲の人の誤解や偏見をなくしたい」。そんな思いで番組に出演しながら、発達障害児や保護者の支援活動に取り組んでいる。

 沖縄県で生まれ育ち、十年前に川口市に転居。小学生になった息子が授業中に席を突然立ったり、衝動的に友達をたたいたりするようになった。病院で、注意欠陥多動性障害(ADHD)などと診断された。

 その際、医師に「お母さんも発達障害では?」と言われた。診察の結果、学習障害(LD)や広汎性発達障害などと分かった。

 「小学生のときは掛け算ができるのに、足し算は苦手だった。指で数えないと答えを出せない」。同級生と話していて、相手の気持ちを考えずに本音を言って傷つけたことも。当時、その原因は誰も知らなかった。「みんなに変人だと思われ、いじめに遭った。一時は不登校になった」

 自分と息子に同じ障害があるのを知り、一念発起した。「私のようなつらい経験を息子にしてほしくない」。二〇一三年に知人らと「チャイルド・ギフト」と名付けた団体をつくり、発達障害の特性を知ってもらう講演活動を始めた。

 「FM Kawaguchi」への出演は一六年から。活動のPRのためスタジオを訪ねた際、発達障害をテーマにした番組を提案したのがきっかけだ。

 この年には、学童保育所に出掛けて発達障害児への対応を助言する活動もスタート。「ADHDの子は例えば、おやつの時間にじっとできない。その子にどんな気持ちかを聞いて、『一分間だけ座ってみよう』とか一人一人に合ったサポートをするんです」

 さらに当事者や保護者から電話相談を受けたり、支援者の養成講座を開いたり、多忙な日々を送る。今は、中学生になった息子が新しい環境になじめるよう試行錯誤を重ねている。

 「発達障害はずっと人生について回る。私たち親子の経験も生かし、発達障害のある方の生涯を支える活動をしたい」。大きな目標を胸に、奮闘は続く。 (杉本慶一)

<よしの・はるえ> 沖縄県生まれ。川口市で夫と息子との3人暮らし。「チャイルド・ギフト」は2014年にNPO法人となり、代表理事に就任。「FM Kawaguchi」(85.6メガヘルツ)の「Dear.Mother 発達障害を知る」は毎週月曜午前9時〜9時半放送(インターネットでも聴取可)。チャイルド・ギフトへの問い合わせは、事務局=電050(3736)7447=へ。

 

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