東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 埼玉 > 記事一覧 > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【埼玉】

介護現場の人材確保 狙いは“専門外”学生 施設増で「資格者」不足

合同企業説明会でブースを訪れた学生に説明する馬場裕史さん=さいたま市のさいたまスーパーアリーナで

写真

 人材確保が課題の介護の世界で、大学や専門学校で福祉を学んでいなかった学生の採用意欲が高まっている。施設の数が増える中で、介護福祉士の資格を持った人に絞った採用活動では職員数が維持できなくなったからだ。「売り手市場」の中で一般企業と人材の奪い合いが生じることになり、関係者は介護現場のイメージアップの重要性を指摘する。 (井上峻輔)

 十九日にさいたまスーパーアリーナで開かれた新卒学生対象の合同企業説明会。メーカーや商社など三十社ほどの中に、寄居町の社会福祉法人「栄寿会」のブースがあった。

 「福祉を専門に学んでいなくても大丈夫。自分が学んできたことや得意なことが介護にも生かせるんだよ」。事務長の馬場裕史さん(37)がリクルートスーツを着た学生に呼びかける。

 栄寿会は、町の中心部から約三キロの山間部にある特別養護老人ホーム「あきやま苑」などを運営する。ショートステイやデイサービスを含めて九十五人が働き、毎年介護職員の新卒採用を続けている。

 かつては福祉系の学科がある大学からの採用ばかりだったが、五年ほど前に変化があった。新卒の学生が集まらなくなったのだ。

 「施設数が増える一方で介護職志望者は減っている。今までと同じ採用ではだめだと思った」と馬場さん。目を付けたのが福祉を学んでいない学生だった。資格は就職してから取ってもらえばいいと考えた。

 民間の就職活動サイトを利用し始め、一般企業との合同説明会にも参加するようになった。今では新卒採用者の半分は経営学など福祉以外の学部出身者になり、今春は理系の学生だった職員も入ったという。

 栄寿会のように採用のターゲットを変える法人が出てきた背景について、県社会福祉協議会福祉人材センター長の龍前航一郎さんは「一般企業の採用が厳しかったころは福祉に人が流れてきた。売り手市場の今は違う。介護を専門に学ぶ生徒も減っている。専門学校やハローワークだけに頼る従来のやり方では採用できない」と分析する。一般企業と人材を取り合うのは簡単ではない。「採用したいと思っても、最終的に一般企業を選んだり親の反対で断ってきたりする学生もいる」と馬場さん。介護の仕事は大変というイメージは根強いという。

 厚生労働省の推計で、県内の介護職員数は二〇一三年は七万七百人。高齢化が進む二五年には十二万一千三百人が必要になる。大幅な人材増は施設ごとの努力だけではなく、就職先に介護の道を選んでもらうための土壌作りも欠かせない。

 県や社会福祉協議会は協力し、中学や高校に出向いて介護の魅力を伝える事業に取り組んでいる。龍前さんは「介護の仕事のイメージを上げるため地道な取り組みをするしかない。楽しさややりがいをこつこつと伝えていければ」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】