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【埼玉】

<ひと物語>美しい蓑に魅了され 民具収集家・中村貞夫さん

自費出版した写真集を手にする中村貞夫さん=羽生市で

写真

 羽生市の民具収集家、中村貞夫さん(82)は五十年以上、蓑(みの)を集めている。自宅の居間や玄関、階段の壁、屋外の物置などに所狭しと、さまざまな形、素材の蓑が並ぶ。収集した蓑は約二百点に上り、多くの人に紹介しようと、そのうち百三十九点を収録した写真集「蓑 美しき先人の技」を今年自費出版した。

 蓑は雨や風、雪を防ぎ、日差しを遮り、泥土の汚れから守るために着用し、荷物を背負うときにはクッションとしても使われる。「農村地帯はわら、スゲ、山間部は木の皮、海岸辺りに行くと、使い古した漁網、海藻。土地によって手近な材料を使っている」。形態や意匠には、伝統の技と作り手の創意工夫が取り入れられ、素晴らしい手工芸品となっているという。

 高校卒業後、羽生市の会社に入社。蓑と出合ったのは一九六二年、妻の恭子さん(80)と新潟県の妙高高原に旅行した時だ。土産品店で真新しい草の香りも残る蓑が目に入った。斜めに整然と編まれており「美しく、息をのむような思いでくぎ付けになった」。独特の芸術的な模様に魅了され、購入した。

 数年後、福島県会津若松市の郊外にある農家の蔵から、百五十年以上前の堂々とした風格のある「イカ蓑」を入手。それ以降も会社勤めの傍ら、恭子さんと共に国内各地や海外へと「蓑を求める旅」が続き、「生き生きと頑張れる源」になったという。

 雑貨店のほか、東京の博物館で開かれる展示即売会などにも足を運んだ。製作者を探し、「素晴らしい達人」と出会うことも。山形市の遠藤長助さんとは、伝統的な「荷背蓑」の作製依頼のため八八年に訪問して以来、親しく付き合い、その数々の作品は「自慢のコレクション」となった。

 写真集は羽生市立郷土資料館で二〇〇六年に開催した特別展「中村コレクション『蓑・笠』」をきっかけに作成。NPO法人野外調査研究所の会員らが、収集された蓑を調査、写真撮影し、編集した。

 A4判、二百二十ページで、青森県の「伊達ゲラ蓑」、秋田県の「樽コゲラ蓑」、山形県の「バンドリ」、秩父市の「道中蓑」など蓑の表地と裏地の写真とスケッチ図を掲載。製作地・採集地、製作者、素材など「資料目録」も記載している。

 長年にわたって収集された多種多様で貴重な蓑の数々。今後については「自分の所で保管できない。本来は温度、湿度を管理する施設が必要。ちゃんと管理できる所に保管を委託しなければいけないと思っている」。 (中西公一)

 <なかむら・さだお> 羽生市出身・在住。県立不動岡高校(加須市)卒業後、小島染織工業(羽生市)で営業などの仕事に就き、65歳まで勤めた。収集した民具は蓑、わら・竹細工など約1500点。写真集「蓑 美しき先人の技」は定価4000円で、1000部発行。問い合わせは中村さん=電048(563)0058=へ。 

 

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