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【埼玉】

<ひと物語>ユニークな和紙 広める 手すき和紙職人・谷野裕子さん

和紙の魅力について語る谷野裕子さん=ときがわ町で

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 松や杉などのかけらがちりばめられた和紙。独特の風合いを醸し出す。腐葉土をすき込んだ和紙は、ごつごつとした迫力と土の温かみを感じる。「木や貝殻など自然の物なら何でも和紙にすき込めますよ」と手すき和紙の職人谷野裕子さん(59)。谷野さんのユニークな和紙はオシャレな照明器具や旅館の壁紙として人気を集めている。

 ユニークな和紙作りの土台にあるのは、小川町や東秩父村などに古くから伝わり、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された細川紙だ。

 黄色がかった重厚な見た目や千年以上朽ちない耐久性がある細川紙。国産のコウゾや天然水など厳選した原料と高い技術が必要で、現在、作れる職人は谷野さんを含めて、五人ほどしかいない。

 兵庫県で育った谷野さんが和紙に出会ったのは三十歳のころ。東京都内の商社で働くキャリアウーマンだった。当時、会社が埼玉県内に進出するために熊谷市に転居。休日に出かけた東秩父村で、偶然和紙の工房に立ち寄った。

 泊まり込みの作業などハードな仕事に限界を感じていたこともあり、黙々と和紙と向き合う職人の仕事に興味が湧いた。何度か足を運ぶうち、「この道で生きていきたい」と思うようになった。

 ちょうど、行政が主催する和紙職人養成講座が開催されることを知り、応募。面接で「移住します」と断言。合格後に会社を辞め、ときがわ町に移り住んだ。

 講座のある土日以外も自宅で名刺サイズの和紙を作り、県内のギャラリーに売り込んだ。「絶対に職人として生活する。和紙のことはすべて学ぼう」。アルバイト先の図書館で、和紙関連の本を借りて読みあさった。

 努力は着実に身につき、めきめきと上達。三年後、細川紙の技術保存や後継者の育成を担う細川紙技術者協会から声がかかり、協会の研修生に。その後も絶え間なく研さんを積み、五十六歳で細川紙の職人として認められる協会正会員となった。

 「細川紙の技術を使って、もっと和紙を知ってもらいたい」と数年前からユニークな和紙作りを始めた谷野さん。先月は都内の女性からの依頼で和紙のウエディングドレスも製作した。「伝統技術を残すには使ってもらうことが一番。例えば和紙を医療の現場で使ってもらえないか。そんな研究をしていきたい」(西川正志)

 <たにの・ひろこ> 1958年8月、岡山県で生まれ、幼少期を兵庫県で過ごす。ときがわ町に工房を構え、コウゾなど原料の自家栽培も手がける。「お客さんの欲しいものを作りたい」と、さまざまな相談に応じており、和紙の食器を作ったこともある。問い合わせは、手漉き和紙たにの=電0493(59)8441=へ。

 

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