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【埼玉】

<ひと物語>自生地の自然大切に 羽生市ムジナモ保存会会長・尾花幸男さん

7月の見学会で参加者にムジナモの生態などを解説する尾花幸男さん。自宅ではムジナモの栽培を長年続けている=羽生市で

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 水面に浮かび、きれいな水を好む食虫植物「ムジナモ」。羽生市の湿地「宝蔵寺沼」は国内唯一のムジナモ自生地とされる。その保全などに取り組むボランティア団体「羽生市ムジナモ保存会」会長の尾花幸男さん(76)は「ムジナモ自生地の自然豊かな環境を多くの県民に知ってもらうため、学習の場を設けて自然の大切さを語っていきたい」と意気込む。

 小学生の時、自宅の近くにある宝蔵寺沼一帯は、トンボや小鳥を追い掛けたり魚捕りをしたり「楽しい遊び場だった」と振り返る。

 宝蔵寺沼は一九五〇〜六〇年代、多様な生き物が共存。貴重なムジナモが生育していることから六六年五月に国の天然記念物に指定された。ところが、同年八月の台風による大雨でムジナモがほとんど流出。その後、水環境の悪化などで豊かな自然が失われ、ムジナモも姿を消していった。

 ムジナモ保存会に入ったのは会が発足した八三年。自宅で育てるムジナモの環境を宝蔵寺沼に近づけようと、ヨシやマコモを水槽に入れる工夫をした。アオミドロが発生すれば手で除き、ムジナモの表面に油状の被膜ができると、じょうろで水をかけて取り除く。

 保存会の会員は市民を中心に約百人。ムジナモの増殖や自生地の植生回復に向け、自宅で育てたムジナモの放流のほか、水の循環対策を講じ、蓄積された泥炭土のかくはんやムジナモの芽を食べる大型魚の駆除なども実施している。

 宝蔵寺沼を管理する市教育委員会や地元の小学校とともに粘り強く活動した結果、自生するムジナモの数は増え続けている。二〇一六年は十五万株、一七年は二十三万株を超え、今年は七月の時点で約四十三万四千五百株と過去最高を記録した。

 ムジナモは根がないため、大雨の際は沼から流れ出てしまう。一方でヨシやマコモに絡んで守られ、流出を免れることもあり「宝蔵寺沼の懐の深さと神秘的な環境に驚く」という。

 宝蔵寺沼は現在、さまざまな植物が生え、多種類のトンボが飛び交う。ムジナモは県のレッドデータブックで「野生絶滅」となっているが、沼では放流している区画以外でもムジナモが自生しており「絶滅でないことを認めてもらいたい」と期待する。

 ムジナモが生育できる環境は多様な生き物が共存できる環境でもあるという。「自然豊かな素晴らしい環境が戻ってきた。後世に残したい」と力を込める。(中西公一)

<おばな・ゆきお> 羽生市出身・在住。市内の高校卒業後、会社員を経て県庁に入り、道路や河川に関する仕事に携わり、2003年に定年退職。16年に羽生市ムジナモ保存会の会長に就任。市立三田ケ谷小学校の学習活動などを支援する「学校応援団」で、児童にムジナモのことを教えている。ほかに市文化財保護審議委員などを務める。

 

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