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【埼玉】

<ひと物語>子どもに自己表現の場 月1で「食堂」運営、NPO法人代表・今川夏如さん

「大人は子どもの意見に耳を傾けてほしい」と話す今川さん=さいたま市で

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 にぎやかな三階建ての事務所兼自宅は、八人が生活するシェアハウス。一階の共同キッチンは月に一度、子ども食堂となり、近所の子どもたちの笑い声が響く。運営するNPO法人「みんなの夢の音楽隊」代表の今川夏如(なつゆき)さん(40)=さいたま市桜区=は「大人の言いなりではなく、自分の意思を伝えられる子に育ってほしい」と願う。

 NPO法人を立ち上げたきっかけは、高校三年生のころにさかのぼる。通っていた全日制高校に定時制もあり、入学を目指す中学生が勉強する補習塾でボランティアを経験した。

 集まる生徒のほとんどは、生活保護の受給世帯。勉強に集中できる家庭環境ではなく、警察による補導もしばしば。だが、アルバイトで稼いだお金をお小遣いとして妹弟にあげる優しい子どもたちだと知った。

 外では気を張っていても、補習塾では子どもらしい表情を見せる中学生。試験勉強に付き添いながら、家庭からも社会からも距離を置いた子どもの居場所づくりの必要性を感じた。

 子どもを取り巻く社会状況を学ぼうと大学進学後、子どもの権利条約を広める教育研究者の大田堯(たかし)さん=さいたま市=らの勉強会に参加。二〇〇〇年に地域住民も巻き込んで、条約を分かりやすく伝えるミュージカルの上演を手掛けた。

 その後も各地で音楽イベントを開催。芸術を通して子どもが自分らしさを表現できる居場所づくりに奔走し、〇四年にNPO法人を設立した。

子ども食堂で流しそうめんを味わう子どもたち(今川さん提供)

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 活動は国内だけでなく、〇二年以降は海外へも飛ぶ。アフガニスタンでは、イラク戦争下に生きる子どもたちに「笑顔を届けたい」と奔走する現地の同年代の若者が立ち上げた劇団を毎年資金面で支援。子どもたちの写真でカレンダーを作り、売り上げを寄付し、日本に劇団を招いて公演したこともある。

 フィリピン人の母親と日本人の父親の間に生まれ、父親の認知を受けられずに母親とフィリピンへ戻らざるを得なかった子どもたちの手助けもしている。子どもたちは毎年、父親を捜しに来日し、自分たちの境遇を演劇にして全国各地で伝えている。父親の手掛かりを追い、面会にこぎつけた子どももいる。

 「生まれた境遇を受け止め、それに左右されずにどう生きていきたいかを考えてほしい」と今川さん。

 アフガニスタンやフィリピンで出会った子どもたちの中には、努力を重ねて医者になる夢をかなえた子もいる。力強く生きているという報告が何よりうれしい。 (浅野有紀)

<いまがわ・なつゆき> 東京都江戸川区生まれ。2004年にNPO法人を設立し、さいたま市桜区と大宮区で子ども食堂を運営する。映画の自主上映会や夏キャンプなど催しは多彩。8月に、さいたま市内で開いたイベント「こどもがつくるまち」は、仮想の町で仕事や買い物をして社会を学ぶ小学生200人以上でにぎわった。

 

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