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【埼玉】

<ひと物語>秩父薫るビールを 秩父麦酒醸造責任者・丹広大さん

秩父ならではのビール造りに励む丹さん=秩父市で

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 日本酒、焼酎、ワインにウイスキーと、多くの地酒が造られてきた秩父地方。郷土料理のおっきりこみうどんやホルモン焼きに合わせたり、秩父夜祭や龍勢祭などの後に仲間内で酌み交わしたりし、独自の酒文化を育んできた。そんな秩父で昨年十一月、新たにビール造りを始めたのが「秩父麦酒」の醸造元「ベアーミートベアー」の丹広大さん(39)だ。

 北海道函館市出身だが、「『秩父』と名乗る以上、下手なビールは造れない」と口元を引き締める。

 秩父麦酒の定番商品は「ペールエール華熊」「ウィートエール雪熊」「紅熊Xレッドエール」の三種類。苦味の少ない爽やかな味わいが好評だ。年間生産量は五十キロリットル。「そんなには売れないだろうと思っていたが。予想の倍以上」。好調ぶりに自身が驚く。

 ビール造りを意識しだしたのは二〇一四年ごろ。医師で妻の祐夏さん(40)の赴任に伴い、秩父市に引っ越してきた。ふと立ち入った市内の食料品店は、世界各地のさまざまなワインのボトルがずらり。アルコール好きの丹さんは、すぐに店の担当者と意気投合した。

 この担当者は秩父市内でワイン醸造会社を経営する深田和彦さん。丹さんはドイツやベルギーを訪れてはビール造りのきっかけを探っていた。丹さんは深田さんを通じて、市内の日本酒醸造業者「タイセー秩父菊水酒造所」からビールの醸造設備を譲り受けることに成功した。

 ビール造りに至るまでは曲折があった。函館の高等専門学校を卒業後、いったんは土木建設会社に就職。しかし、同期入社の社員が勤務中に不慮の事故で亡くなったこともあって退職し、その後は転職を繰り返した。次のステップが見つけられずに実家に戻ったことも。そんな中、出会ったのが祐夏さんだった。

 ビール造りは今、夫婦の二人三脚で進めている。社長の祐夏さんが商品のラベルをデザインし、醸造責任者の丹さんが「秩父麦酒」ののぼりを引っ提げて飲食のイベントを飛び回る。さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で五日から始まる「けやきひろばビール祭り」にも自社の製品を出品する予定だ。

 「醸造所のある西秩父はミネラルを含んだ硬い水が特徴。近くでは香り付けにぴったりのカボスやユズ、リンゴも採れる。この地で造るビールを、もっと多くの人に味わってもらえれば」 (出来田敬司)

<たん・こうだい> 北海道函館市生まれ。国立函館工業高等専門学校を卒業後、大手土木建設会社「ライト工業」に入社し、橋の設計や現場監督などに携わる。27歳の時に中央大法学部に編入学し、法社会学を研究した。2014年から秩父市在住。皆野病院医師で妻の祐夏さんと2人暮らし。少林寺拳法や空手をたしなむ格闘家の顔も。

 

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