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【埼玉】

<ひと物語>国産材 良さ五感で 「木力館」館長・大槻忠男さん

「木の良さを五感で感じてほしい」と話す大槻さん=いずれもさいたま市岩槻区で

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 建物に入ると、木材の心地よい香りが漂ってきた。「国産の天然材だけを使って建てている。木の良さを五感で感じてほしい」。さいたま市岩槻区にある木の博物館「木力(きりょく)館」の大槻忠男館長(81)は、誇らしげに館内を見回す。

 木力館は、大槻さんが創業した木材卸売業「大忠」の敷地内にある。上から見ると六角形の形が特徴的な二階建ての建物。ポプラ、スギ、カエデ、マツ…。柱に使う丸太は、一本ずつ種類が違う。らせん階段もテーブルも、書類を入れるケースまで全てが木製。まさに建物自体が博物館だ。

 「においをかいでみて」。大槻さんが樹齢三十年ほどのヒノキの板を差し出してきた。水を吹きかけると、木の香りが際立つ。次に渡されたのは樹齢八十年を超えたヒノキ。同じ材料なのに、香りはより強くなった。「全然違うでしょ。香りは文章や映像では表現できない。ここに来て体感してもらわないと」

 自身も木と触れ合い続ける人生を送ってきた。

 宮城県の農家の次男として生まれ、地元の高校卒業後に東京都内の材木店に就職した。最初から木が好きだったわけではない。「住み込みで働けて飯を食わしてくれるところなら、どこでも良かった」

 北海道から鹿児島まで全国各地を回って材木を仕入れる日々。寸法を体で覚えるところから始まった。木と向き合う時間が長くなるうちに、木材の奥深さにのめり込んでいった。

 一九六七年に独立し、四年後に旧岩槻市で「大忠」を創業。縁もゆかりもない土地で、ゼロからの出発だった。地元の大工との関係作りから始め、次第に会社の規模を拡大していった。

上から見ると六角形の形に造られている「木力館」

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 そうやって半世紀以上も木材と関わるうちに、新たな思いが生まれてきた。「国産の木材の魅力をもっと発信したい」。ハウスメーカーが造る家が増え、材料も輸入木材や化学物質が主流になってきた。国内の林業が衰退していることにも危機感を抱き始めていた。

 会社の経営から退いたのを機に「木力館」の建設に着手し、二〇〇六年にオープンした。最近は毎日のように見学者が訪れ、小中学生の団体客を案内する機会も多い。遠方の県の建築士会など「プロ」の視察も相次いでいる。

 今は、岩槻区内に新たな自宅を建築中だ。使うのは全て国産材。雨戸も木を使い、風呂もヒノキ風呂だ。「やっぱり日本の気候風土に合うのは国産材の家。こっちも多くの人に見てほしい」と完成を楽しみにしている。(井上峻輔)

<おおつき ただお> 宮城県出身。高校卒業後に上京し、材木店勤務を経て1971年に旧岩槻市で材木会社大忠を立ち上げた。87年に岩槻市議会議員に立候補し初当選。4期16年務め、議長も経験した。木力館はさいたま市岩槻区新方須賀558の2。電048(799)1560。年中無休(盆と年末年始を除く)。

 

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