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【埼玉】

<ひと物語>音楽の力 子どもらに オペラ歌手・薗田真木子さん

情感たっぷりに歌声を響かせる薗田さん=長瀞町で

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 十一月上旬、長瀞町立長瀞第二小学校の体育館に、地元オペラ団「ちちぶオペラ」の男女三人の伸びやかな歌声が響いた。メンバーのソプラノ歌手・薗田真木子さんは秩父市出身。「小さい頃に触れたものは一生、影響する。音楽は人の思考を深くするんです」と学校を中心に歌声の素晴らしさを伝えている。

 声楽を身近に感じられるようにと開かれた同校の「音楽鑑賞会」の授業。全校児童約七十人と保護者らが見つめる中、イタリア歌謡の「フニクリ・フニクラ」や日本の唱歌「待ちぼうけ」を披露した。歌の合間には、クイズを出したり、児童たちと体を動かしたり。子どもたちの笑い声が、会場いっぱいに響いた。

 薗田さんが音楽を学び始めたのは五歳の時。「幼少期に習い事をさせたい」という、母の意向がきっかけだった。ドイツ歌曲が専門の菅谷君夫さんのもと、厳しいレッスンに励んだ。「学校が好きで、人前で歌うのが大好き。歌えと言われなくても、合唱の発表会の合間に歌っていた」と当時を振り返る。

 音大に入学したのは一九八〇年代。華やいだ時代背景もあり、自身の関心も独唱が主体のドイツ歌曲から舞台芸術のオペラへと向かう。「オペラは愛や死がテーマで、劇中で殺されたり自害したりする。人間の声でドラマを紡いでいく面白さがあった」。「フィガロの結婚」(宮本亜門演出)や「魔笛」(実相寺昭雄演出)など、数々の大舞台で活躍した。

 現在、力を入れているのは地元・秩父での演奏活動だ。二〇一一年に若手音楽家の育成などに取り組むイベント「ちちぶ国際音楽祭」に参加し、歌曲やオペラの普及に力を注いだ。その後、音楽祭は毎年夏に開く「ちちぶオペラ」へと発展。「ミカド」「ラ・ボエーム」「カルメン」などの公演で大役を務めてきた。

 人口約六万人の山間部の町・秩父で「なぜオペラなのか」と、不思議に思う声をしばしば耳にする。しかし、「秩父はオペラが受け入れられやすい土地柄。夏には秩父川瀬祭、冬には秩父夜祭がある。生活の中にリズムが溶け込んでいる」ときっぱり。

 大学での指導、新国立劇場の公演、地域の学校の出演−と、多忙な毎日をすごす薗田さん。「音楽があるから社会につながり、人の役にも立てる。音楽だけは一生やめられない」と力を込める。 (出来田敬司)

<そのだ・まきこ> 秩父市生まれ。県立秩父高校を経て、桐朋学園大音楽学部卒。第12回奏楽堂日本歌曲コンクール1位、第71回日本音楽コンクール声楽部門3位(歌曲)。2006年には東京二期会公演「フィガロの結婚」にスザンナ役で出演。NHK交響楽団などとの共演も多数。父の稔さんは秩父神社の宮司を務める。

秩父宮記念市民会館落成記念公演「ミカド」の一幕。前列右から4人目が薗田さん(薗田さん提供)

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