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【生活図鑑】

救急患者の「たらい回し」問題 病院情報、医師不足など背景に(No.203)

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二〇〇七年に救急搬送で医療機関から三回以上受け入れを拒否された「たらい回し」は、全国で二万四千八十九件(重症、妊婦、小児)ありました。理由は、処置困難、手術・患者対応中などですが、その背景には、勤務医不足、医療訴訟のリスクなどに加え、搬送・受け入れの総合調整を含め消防と医療機関の情報連携不足があるようです。

 国民が命を託す救急車と病院。総務省消防庁によると、二〇〇七年に一回の受け入れ先照会で患者の搬送先が決まったのは80%以上でした。しかし、残りは受け入れ先がなかなか決まらず、最大六十二回受け入れを拒否された事例もあります。

●消防との連携が課題

 三回以上拒否された事例(一部重複)は、重症患者が一万四千三百八十七件、妊婦は千八十四件、小児患者は八千六百十八件でした。いずれのケースも東京、大阪など大都市圏が多いのです。

 手術スタッフや設備がないなどの「処置困難」「手術・患者対応中」「専門医がいない」「ベッドが満床」などが拒否の理由です。

 たらい回し解消に向け地域ごとに導入した「救急医療情報システム」への強い批判があります。消防庁の関係者は「受け入れ可否など医療機関の情報更新が一日一、二回では少ない。医師の判断に基づき情報をリアルタイムで提供してほしい」と指摘しています。

 これに対し厚生労働省は、〇八年四月の診療報酬改定で、産科医療、小児医療などの診療報酬を引き上げました。診療所などで時間外急患を受け入れる体制を推進するため、早朝や夜間診療時の初診・再診料を引き上げました。

 医療機関側が急患を受け入れやすくするための政策ですが、医療費の増加要因になることは否めません。

●増える高齢者の搬送

 同省は、〇八年度から消防と医療機関側の調整役となるコーディネーターを都道府県等に配置する補助事業を開始。救急医療情報システムの改善も図る方針です。

 一方、高齢者(六十五歳以上)の搬送は、一九九六年で約百六万人だったのが、〇六年には二倍の約二百二十万人に増えました。

 総務省の推計人口(〇七年十月一日現在)によると、大都市圏への人口集中が加速しています。六十五歳以上の老年人口の前年比は、埼玉、千葉、神奈川、愛知など十三の都府県で全国平均を上回りました。

 消防、医療機関の問題にとどまらず、人口集中と同時並行的に進む高齢化など構造的な要因は無視できません。救命救急活動の充実のみならず構造的要因への対応を含め、この問題を社会全体で考える必要があります。

 利用者側も、救急車や医療機関の適正利用を心掛けることが大切です。

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