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【生活図鑑】

高齢者と医療制度の変遷 「無料化」から35年 新制度は混乱(No.207)

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 高齢期の医療制度が問題になっています。スタートした後期高齢者(長寿)医療制度は手続きや年金からの引き落としの不備で混乱したままです。

 国として1973年に、医療費の無料化など老人医療を制度化してから35年。今、再び制度問題の議論が高まっています。

 誰もが公的医療保険制度に加入する国民皆保険が実現したのは、一九六一年。しかし、医療機関での自己負担は年齢に関係なく、会社員など健康保険制度に加入する本人は定額、被扶養者は五割、国民健康保険加入者は三割などでした。

●受益と負担の適正化

 これでは、所得が少なく、傷病率の高い高齢者に自己負担が重くのしかかり、医療機関での受診が進みません。

 このため、六〇年に当時の岩手県沢内村(現西和賀町)で、公費負担による老人医療費無料化が始まったのに続き、六五年以降、地方自治体で「福祉の一環」として無料化や負担軽減措置が広がりました。

 国は、自治体の動きを無視できず、七三年に老人福祉法を改正し、老人医療費の無料化を実施。この時から、高齢期の医療制度の議論が始まったといえます。

 無料化は、高度成長期を支えた高齢者に対し、どのように報いるかといった議論のなかで生まれたものでした。同時に、医療機関の受診率が急増、医療機関の待合室がサロン化するなど、老人医療費が増加していくことになります。

 このため八三年、七十歳以上(六十五歳以上の寝たきり)の高齢者を対象にして、本人が一部負担するとともに、国、地方、さらに世代間で高齢者医療費を賄う老人保健制度が発足しました。

 しかし、少子高齢化が進むなか、老人医療費の増加は避けられず、高齢者の自己負担も徐々に重くなり、二〇〇一年にはそれまでの定額負担から定率負担を実施。

 さらに〇六年の小泉政権下の「聖域なき改革」で高齢者の応分な負担と医療費の適正化を目的にした医療制度改革法が成立。〇八年四月から老人保健制度に代わる七十五歳以上を対象にした新制度が発足しました。しかし、制度の説明や準備不足で混乱し、国民の不信を招いています。

●丁寧な説明と対応を

 医療費の増加、とくに老人医療費が増えることは高齢社会の国にとって、避けられないことです。一方では、医療費の適正化も重要な課題です。では、どのような高齢者医療制度が良いのでしょうか。

 よく世代間の問題として、六十五歳以上の医療費は六十五歳未満の医療費の約五倍といったことが指摘されます。現役世代の負担の問題になります。もちろん、現役世代の負担が重くなることは、社会や経済にさまざまな悪影響を与えます。

 しかし、一生のうち、医療費が増加するのは六十歳以上になってからです。年齢が高くなるにしたがって、一人当たりの医療費も増加していきます。また、誰しも年を取り、病気にかかりやすくなります。

 世代間というとらえ方だけでなく、一生のうち医療費の負担をどのようにするのか、また必要なときにどれくらい医療サービスを受けられるのか、という点を考える必要があります。

 一方、六十歳以上へのアンケートでは、日本はフランスとともに若年世代を重視すると考える割合が高く、やみくもに高齢者だけを優遇してほしいとは考えていません。

 三十五年以上も大きな課題だった高齢者の医療制度。しかし、新制度発足前に十分な説明がなされたのでしょうか。今からでも丁寧な説明ときめ細かな対応が、医療制度では必要です。

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