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【生活図鑑】

後期高齢者医療制度の問題点 戸惑い多く 透明性なき新制度(No.208)

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 後期高齢者(長寿)医療制度が混乱しています。保険証が届かないというトラブルから始まり、保険料設定への疑問や受けられる医療制度の内容など、国民への説明不足により、制度自体の信頼が揺らいでいます。政府・与党による制度の見直しが進むなか、疑問点を挙げてみました。

 高齢になれば、医療機関にかかる確率が高まります。傷病リスクの高い七十五歳以上と六十五歳以上の障害者のみの独立した保険制度が成り立つのでしょうか。保険はリスク分散が基本ですが、新制度は全く違う考えです。こうした疑問は制度発足前からありました。

 とくに財政面で懸念がありました。このため自己負担をのぞき、本人保険料一割、現役世代の支援四割、公費五割負担の「世代間の連帯」でスタートしました。しかし、これでは保険ではないという指摘もあります。連帯は従来の老人保健制度と同じ考えです。

 ●低所得者は負担減? 

 ではなぜ、新制度が必要だったのでしょうか。厚生労働省や審議会での議論は「老人保健制度は運営主体が明確でなく、医療費の適正化などに問題があった。新制度は都道府県単位の広域連合が主体で明確になる」との内容で、新制度の導入で医療費の適正化が図られるとみているのです。

 新制度は、七十五歳以上の加入者は全員、保険料を負担します。今まで保険料負担がなかった会社員世帯の扶養家族だった人も新たに負担が生じます。七十四歳まで負担がなく、七十五歳になっていきなり負担を求められることに戸惑う人も多くいます。これについても「高齢者の負担明確化」で医療費の適正化につながるというわけです。

 一方、所得の低い人には国民健康保険同様の軽減措置を設けたほか、扶養家族だった人には経過措置を設けました。

 しかし、国保の場合、低所得者や障害者に市町村独自の補てん措置を設けていた場合もあり、結果的に保険料が上昇したケースもあります。政府は「低所得者は総じて保険料が下がったはず」としていますが、明確な調査はなく、実態は不透明です。

 新制度の保険料は、将来、どうなるのでしょうか。厚労省の二〇〇六年度時点の試算では、開始時の保険料額(全国平均)は年六万一千円程度で、一五年度に八万五千円程度としていました。だが、実際の開始時は七万二千円程度に上昇、〇六年の厚労省の試算倍率を当てはめると一五年には十万円程度にもなります。

 高齢者の所得が増加する見込みはなく、負担が限界なら保険料の上昇にも限界があります。この場合、現役世代の支援を増やすのでしょうか。

 ●必要な検査できぬ恐れ

 新制度はこれまでと同じ医療を受けることができる、としています。医療費の増加を抑える手段として、複数の医療機関にかかることの多い七十五歳以上の外来患者について、担当医が総合的に診察する制度を設けました。半径四キロ以内に診療所等が存在しない医療機関の場合は、糖尿病など慢性疾患の患者が合意すれば、医学管理、検査、画像診断、処置について月六千円(患者負担月六百円)の包括払いにする制度「後期高齢者診療料」を設けました。

 地方の医師会からは、開業医の死活問題という批判があるほか、高齢者には複数の疾病があり主病という考えは当てはまらず、包括払いでは必要な検査ができない恐れもある、との指摘も。

 政界では、野党による制度の廃止法案提出や与党内での見直しの動きもあります。

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