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【生活図鑑】

「年金財政検証」を検証する(No.258) 甘い試算前提、100年安心の制度は大丈夫?

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 「100年安心」をうたった2004年の年金制度改革の財政検証が初めて行われました。モデル世帯(夫が会社員、妻は専業主婦)の年金額の所得代替率(現役男子の手取り収入と比較した年金水準)は、将来的に50.1%まで下がるものの、50%を下回らないとしています。しかし、04年当時より甘いといわれる前提に疑問が上がるなど、本当に100年安心なのでしょうか?

 二〇〇四年の年金改正で政府・与党は、モデル世帯の所得代替率は、将来にわたって50%を下回らないとの約束をしました。当初、年金水準は二三年度以降50・2%で下げ止まると試算していました。

 今回の検証では、それが三八年度以降、50・1%で下げ止まると試算し直しました。下げ止まる期間が十五年延び、年金水準は0・1ポイント下がるものの、かろうじて約束の50%は維持できるとしています。

 果たして、問題はないのでしょうか。

 まず、試算の前提が問われています。今回の前提は一六年度以降、名目賃金が毎年2・5%上昇し、年金積立金の運用利回りは名目4・1%、また、合計特殊出生率は1・26(五五年)です。

 賃金が毎年、こんなに上昇するのでしょうか? 米国発の金融不安による世界同時不況の影響を受け、〇九年の春闘では軒並み賃金が抑えられ、なかには実質賃下げの企業も多くありました。

 また、派遣・パートなど非正規労働者が増加した影響で、賃金も頭打ち傾向が続いています。企業の賃上げ率をみても〇四年以降1%台が続き、2%台になった年はありません。

●高い運用利回り

 しかも、年金の運用も4%を超える利回りを毎年確保できるのでしょうか? 年金積立金を運用する独立行政法人「年金積立金管理運用」によると、〇八年度第三・四半期(〇八年十−十二月期)の市場運用の運用損益は五兆七千三百九十八億円の赤字で、運用利回りはマイナス6・09%でした。年度全体でも十兆円を超える運用損の恐れもあります。

 運用利回りの目安となる長期金利は〇九年初頭で1・3%前後にすぎません。

 しかも〇四年時点での試算の前提では、〇九年度以降は賃金上昇率2・1%、運用利回りは3・2%でした。この時も、試算の前提が甘いのではという疑問が出ました。今回は賃金上昇率、運用利回りともさらに上げた前提で、約束の「現役世代の50%確保」を維持したように見えます。

 百年安心の年金改革が想定通りに進んでいないため、結果として少子化の影響を考慮して年金の給付抑制を行う「マクロ経済スライド」の見通しも大きく変わりました。〇四年改革では、スライドは二三年度に終了するとしていました。しかし、今回の検証では一二年度から開始し三八年度まで年金抑制の調整が続くとしています。

 試算の前提は長期的な視点に立つとはいえ、これで大丈夫なのでしょうか?

●現状納付率60・9%

 一方、非正規労働者や無職の増加により、国民年金の納付率は向上していません。〇九年試算の前提では納付率は80%でした。しかし、納付率は〇九年一月時点で60・9%。このため、民主党が現状に合った試算を求めたのに応じ、厚生労働省が納付率65%で試算したところ、所得代替率は49・2−49・35%に下がりました。納付率が78%を割り込むと、所得代替率は50%を維持できなくなる計算です。また、経済成長率が低迷しても50%を割り込むとしています。

 年金は老後生活の柱です。本当に安心なのか、基礎年金の税方式化も含め、年金制度のさらなる検証が必要なようです。

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