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【生活図鑑】

年金 世代間格差を考える (No.265) 負担と受給倍率の議論だけでいいの?

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 年金の世代間格差が話題になっています。厚生労働省の試算によると、2010年に70歳になる厚生年金加入のモデル世帯は、支払った保険料(専業主負担分除く)の6.5倍の年金を受け取る一方で、30歳以下の世帯は2.3倍しか受け取れません。しかし、世代間格差を考える場合、年金額と保険料の倍率だけで考えて良いのでしょうか?

 厚労省の試算では、一〇年に七十歳になる世帯は、〇九年度時点の現在価値で、厚生年金保険料を九百万円負担し、五千六百万円の年金を受給します。倍率にして六・五倍です。一方、五十歳から三倍を割り、三十歳世帯は保険料負担三千万円に対し、年金額は七千万円、倍率二・三倍に落ち込みます。

 また、〇四年時の試算と比べても格差が広がっています。理由として、年金額を物価や少子化の影響に応じて抑制するマクロ経済スライドの実施の遅れが挙げられています。

 〇四年では〇七年度から十七年間、スライドが行われる予定でしたが、デフレで物価が予想よりも上昇しなかったなどで、現在は一二年度から二十七年間、スライド予定で、若年世代に抑制の影響が出やすくなっています。

 給付と負担の倍率だけをみれば、明らかに格差があります。このため、若年世代は「損をしている、不公平だ」と考え、保険料未納の原因とも指摘されています

●社会資本などは充実も

 一方、世代間の負担と給付を考えるうえで、厚労省は、六十歳以上で倍率が高いのは、戦後の混乱した経済で負担できる保険料も低く、その後、経済成長に合わせ、給付の改善を行ってきたためとしています。

 また、高齢世代の現役期は、社会保障制度も充実していませんでした。両親などを私的に扶養してきましたが、現在では年金など社会保障制度で支えるしくみに変わっています。さらに、若年世代は、高齢世代が築いた社会資本を受け継いでいます。下水道普及率は一九七一年は17%でしたが二〇〇六年は69%に、道路舗装率も同様に22%が79%にそれぞれ上昇しています。

●差額に着目すると

 さらに見方を変え、倍率でなく水準に着目し、単純に受給する年金額から保険料を差し引いてみましょう。すると七十歳で四千七百万円、五十歳で三千三百万円、三十歳で四千万円、二十歳で四千七百万円という結果になります。

 賃金・物価上昇率、経済スライドなど、試算の前提も影響しているとはいえ、生活水準といった観点から見ると、従来の若年層のみが損という姿とは違って見えます。

 社会保険を私的保険と同じと考え、給付と負担倍率などは同じでなければならない、と考えるなら、世代間扶養(賦課方式)をとる現在の年金制度は不公平と映ります。このため、世代間扶養部分を抑え、個人の積み立てた保険料が給付に反映するように、一部、積立制度の採用も提案されています。

 半面、公的年金は社会保険として国が行うもので、私的保険と違い、給付と負担の倍率のみに着目する議論はなじまないとする考えもあります。

 若年世代のみが損をするという制度では信頼を得られません。しかし、給付と負担の倍率のみで格差を論じて成り立つものか、疑問です。

 年金は老後の所得保障です。世代間格差をどのように考えるか、簡単ではなさそうです。

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