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【生活図鑑】

医療事故と補償制度(No.282) 産科で初認定 全診療へ拡大焦点

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 政府・与党は政権公約ですべての診療科で、医師や看護師などに過失がないとしても、患者側が補償を受けられる制度の創設を掲げています。医療訴訟では、審理が長期間に及ぶうえ、患者側が医療関係者の責任を立証するのは難しいものです。また、訴訟を嫌って産科などで医師不足になるなど、社会問題にもなってきました。このため、2009年から産科を対象に「産科医療補償制度」がスタートし、今秋、初の認定も行われました。しかし、同制度は対象範囲が限られるなど、課題も指摘されています。医療訴訟と補償制度を考えてみます。

 司法統計によると、新たに裁判所が受理した医療訴訟は、二〇〇四年に千百件を超え、その後も九百件前後で推移しています。また、以前よりは短くなったものの、平均の審理期間は二十四カ月(〇八年)を要しました。

 しかも、原告の勝訴率である認容率(第一審)をみると低下傾向にあり、〇八年は26・7%でした。とくに通常の民事訴訟の認容率が84・2%であることを考えれば、医療訴訟で原告側(大半は患者)が勝訴するのは難しくなっています。このため、患者が医療訴訟で補償を得られにくいこともあり、医師の過失の有無にかかわらず、救済する制度が求められていました。

●医療崩壊防ぐ

 産科(産婦人科、産科合計)は、医師数に比べ、訴訟リスクの高い診療科といわれてきました。〇四年の福島県立大野病院での産科医療事故では、医師が刑事責任を問われました(〇八年無罪確定)。

 訴訟などを恐れ産科医のなり手がなく、総医師数は一九九六年に比べ二〇〇六年は約8%増加したのに対し、産科医は約11%減少。産科医療の崩壊という社会問題にも発展しました。このため、〇九年から患者救済と事故原因究明を目的に民間保険を活用した補償制度がスタートしました。

 補償対象は原則、出生体重二〇〇〇グラム以上、妊娠三十三週以上の新生児が身体障害者等級一〜二級相当の重度脳性まひを発症した場合です。遺伝子異常など先天性要因による脳性まひは対象外です。

 掛け金は一分娩(ぶんべん)あたり約三万円。出産一時金も掛け金相当分引き上げられました。補償金の総額は三千万円。最初に一時金六百万円、二十歳まで毎年百二十万円が支給されます。九月末には初の補償が認定されました。

●補償は限定的

 産科補償制度は、原則、重度脳性まひに限られ、補償も二十歳まででよいのか、という問題点も指摘されています。

 一方、医師が減少しているのは産科だけの問題ではありません。外科医も減少してきています。難しい手術を敬遠することになれば、医療の質の低下も招きかねません。

 このため、与党はこれまで、全診療科を対象とした公的な補償制度の創設を主張してきました。政権公約でも、公的保険医療機関、薬局、介護施設において発生した医療等事故事例全般を対象に制度を設けるとしています。

 具体的な制度設計はこれからですが、安心して医療を行える、受けられる体制をつくり上げることが大切です。

 制作・亀岡秀人

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