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【生活図鑑】

派遣労働者と海外現地生産(No.291) 派遣減れば工場は海外移転する?

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 製造業派遣や登録型派遣の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法の改正が議論されています。しかし、製造業派遣などが認められなくなれば、生産拠点を海外に移す、と声高にいう人も多くいます。これまで派遣労働者や派遣事業所数はどのように増えたのでしょうか。果たして海外生産との関係はあるのでしょうか?

 一九八六年に派遣労働が解禁されて以来、派遣労働者数は増え続け、二〇〇八年度に三百九十九万人になりました。今では米国、英国と並んで派遣大国とされています。派遣事業所(支社)数は世界的に見ても群を抜いて多く、売上高も七兆八千億円に達しました。労働者数、事業所数、売上高は、派遣法改正ごとに伸びが加速しています。

 一九八六年から九六年改正までは、総売上高が六倍に、年平均伸び率も約20%もありました。事業所あたりの売上高も、年平均9・4%増でした。九六年改正から九九年までは、事業所数は横ばいだったものの、総売上高、事業所あたり売上高ともに年平均約7%の伸びでした。

 一方、派遣が原則自由化された九九年から二〇〇三年までは、派遣業界への参入や事業拡大が相次ぎ、事業所数で年平均15%増、総売上高で13%増と高い伸びとなりました。しかし、事業所あたりの売上高は年平均1・8%減と、マイナスになりました。

 さらに、製造業への派遣解禁などを決めた〇三年から〇八年までの年平均伸び率は、事業所数は約30%、総売上高も27%と大幅に伸びています。逆に事業所あたりの売上高は、年平均2・2%減とマイナス幅が拡大しました。

●99年以降は「薄利多売」

 一方、〇四年からの派遣料金、賃金を見ると〇八年を除き、低下傾向にあることが分かります。労働者派遣事業は拡大しているものの、賃金や事業所あたり売上高が減少していることも考えると、一九九九年以降、いわゆる「派遣労働の薄利多売」と評される状況が続いています。

 登録型、製造業への派遣が原則禁止されれば、経営者などは「海外に生産拠点を移す」と繰り返し主張しています。本当に海外生産は、派遣労働のいかんによって決まるのでしょうか? 

 そこで、海外生産比率と派遣労働者総数や製造業への派遣数との関係を調べると、海外生産は派遣が増加するほど増える関係にあります。解釈は別として、データからは、派遣が雇えなくなる(減る)と、海外生産が増えるとはいえません。

 海外生産の原因として挙げられているのは、安価な労働力以上に現地の需要動向です。さらに今後、需要増加が見込まれる中国や新興国などをはじめ、世界的に保護貿易傾向が強まっており、現地進出しなければならない状況にある、との指摘もされています。派遣法改正を声高に理由として挙げるのは疑問です。

●世界では保護を優先

 派遣業の国際団体である国際人材派遣事業団体連合(CIETT)は世界的な労働組合組織のユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)と、「派遣労働は労働市場に必要であるものの、規制をただ緩和するのではなく、派遣労働者には公正な処遇を行い、組合結成、団体交渉を行うなどの労働者保護の規制が必要だ」との覚書を交わしています。

 英国も欧州連合(EU)の一員として均等待遇などを定めた派遣指令を受け入れています。また、欧州CIETTも労組ともに、派遣一日目から均等待遇を行うことを求めるなど、派遣の必要性とともに派遣労働者の保護を積極的に主張しています。それに比べて日本は…。冷静な議論が必要なようです。

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