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【生活図鑑】

廃止迫る適格退職年金(No.295) 移行の遅れ・解約で受給に不利も

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 適格退職年金の廃止が2012年3月末に迫っています。企業年金として税制優遇措置を受けるためには、他の企業年金などに移行しなければなりません。移行には検討開始から認可・承認まで約1年半かかるとされ、残された時間はわずかです。

 適格退職年金は、一九六二年に始まり、厚生年金基金と並ぶ企業年金の柱でした。適格年金は、投資資金など企業が内部留保を行うため、退職金(賃金)を後払いする方法(退職金の年金化)としてスタートしました。

 あらかじめ年金給付水準を約束した確定給付の年金で、生命保険会社、信託銀行などと契約し、年金資産を運用・管理し、給付するしくみです。掛け金や保険料だけでなく、年金として受け取る際にも控除を受けられるなど、税制優遇措置が認められてきました。

 少ない従業員数でも始められることから、中小企業で導入が進み、九〇年代には契約件数九万件、加入者数も一千万人を超えていました。その後減少したものの、二〇〇九年三月末では約二万五千件、三百四十九万人が加入しています。

●受給権保護に問題

 廃止の背景として、制度発足当初は運用環境に恵まれていたものの、バブル経済崩壊後、運用難に陥ったことが挙げられます。また、適格年金には明確な積み立て基準がないため、本来必要な掛け金・保険料の引き上げが行われないなど、積み立て不足になっているケースが多いと指摘されています。

 とくに〇〇年度以降、退職給付会計の変更により、企業年金の積み立て不足や、受給権の保護が十分でないなどの問題が表面化。〇二年に新たな企業年金である確定給付企業年金法の成立とともに、適格年金を一二年三月末で廃止することが決まりました。移行には検討開始から承認・認可まで一年半から二年かかるとされ、政府も移行のための対策本部を設けています。

 税制優遇を受けられる移行先としては厚生年金基金のほか、確定給付企業年金、確定拠出年金(企業型)、中小企業退職金共済制度(中退共、中小企業のみ)があります。

●解約多い中小企業

 従業員百人未満では、解約が56%(厚生労働省、受託機関調査〇九年)を占めるなど、中小企業では解約、中退共への移行が進んでいます。百人以上では確定給付への移行割合が多くなっています。また、規模の小さい企業ほど移行先が決まっていない、検討中が多くなっています。

 これは、移行するコストがかかるほか、確定給付企業年金では退職給付債務を計上する必要があり、中小企業を中心に財務面での負担を心配しているのではないか、とみられています。

 移行しない場合は、税制上の優遇措置は受けられません。また、解約した場合、年金資産を全額従業員・受給者に分配します。

 いずれにしても積み立て不足の解消や労使合意が必要となります。移行先・廃止によっては年金の減額なども考えられ、従業員や受給者が不利になる恐れもあります。適格年金の移行円滑化が求められています。

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