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【生活図鑑】

確定給付型企業年金の課題(No.297) 業績により減額のリスクも

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 確定給付型企業年金は、あらかじめ年金水準が決まり、老後の生活設計を考えやすいとされています。企業も、人材確保のため確定給付の企業年金を整備するところが多く、以前は会社員の半数近くが加入していました。ところが日本航空などの例で、場合によって年金の減額や企業年金の解散もあることが分かってきました。年金積み立て不足や企業会計の変更などは確定給付型年金にどう影響するのでしょうか?

 あらかじめ年金額が決まっている確定給付型年金は、退職金制度が整っている日本の場合、退職金(賃金)の後払いとして、税制の優遇も受けられます。運用損が出ても企業が補てんするしくみです。従業員に運用リスクはありません。

 しかし、業績によっては、年金の減額や、場合よっては解散にまで発展します。確定給付も従業員がまったくリスクを負わない、という考えは通用しないことが分かりました。

 なぜ、企業業績が年金を左右するのでしょう。これには退職給付会計(企業会計)の影響があります。

●積み立て不足

 年金資産の総額が退職時に支払うべき給付総額(現在価値に換算)を下回っているのが「年金の積み立て不足」です。

 企業会計では退職一時金と企業年金分を退職給付債務とし、年金資産と比べます。債務が資産を上回っている場合、すでに引当金として用意されているものを除いたものが「未認識債務」です。

 年金資産は運用によって変動し、企業決算に影響を与え、最悪の場合、企業年金の減額にもつながります。

 日本は退職一時金制度が一般的なのに対し、欧米では年金が主流です。このため、退職一時金がある日本は未認識債務が大きくなると指摘されています。

 退職給付は長期の運用で考えるものとされ、未認識債務も一定期間内に処理すればよいとされています。しかし、国際会計基準の変更にともなって、未認識債務も迅速処理することなどが検討され、日本企業への影響が懸念されています。

●年金をどう保護?

 二〇〇二年から始まった確定給付企業年金法では、受給者、従業員の年金を守るため、減額するには三分の二以上の同意が必要など、厳しい条件があります。

 また、企業年金を解散する場合も、積み立て不足なら母体企業が一括拠出することになっています。ただし厚生労働省によると、確定給付企業年金で母体企業が破綻(はたん)し、年金が解散した例はありません。企業が破綻した場合は一括拠出は難しく、「年金資産を受給者、従業員で分けることになる」としています。

 一方、米国では確定給付型企業年金の保護がさらに強く、受給者について減額することは法律で許されていません。また、解散した場合でも公的な支払保証機関から、相当額が支払われます。ただ、米国では破綻企業の増加で保証機関の財政が悪化しています。

 日本でも確定給付企業年金法の成立時に、支払保証機関創設の意見が出たものの、新たな掛け金負担を嫌う財界などの反対で実現していません。

 老後生活の柱の一つである企業年金について、公的年金同様にわかりやすい説明、情報公開が望まれています。

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