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【生活図鑑】

協会けんぽと後期高齢者支援(No.299) 総報酬制を導入 医療制度考える契機に

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 主に中小企業の従業員が加入する協会けんぽは、不況の影響で大幅な赤字に陥り、準備金も枯渇しています。保険料の上昇を抑えるため、2010年度から3カ年に限り、後期高齢者支援に回っていた協会けんぽへの国費を削減し、代わりに現役世代への支援に回します。削減分は、負担能力に応じたしくみを取り入れ、健康保険と共済組合の支援金を増額します。健康保険組合連合会(健保連)などは「国費の肩代わり」と批判するものの、負担能力に応じたしくみは今後の医療制度のあり方をも問い直しそうです。

 協会けんぽの財政は破綻(はたん)状況です。不況で中小企業の経営は厳しく、リストラによる加入者、賃金の減少で保険料収入が落ち込み、〇九年度の収支は六千億円の赤字、準備金も底をつき、四千五百億円の借り入れになる見通しです。赤字を解消するには〇九年全国平均8・2%だった保険料を一〇年に9・9%にする必要も出るなど、大幅アップが避けられない状況でした。

 協会けんぽは健康保険組合などの加入者に比べ、年収にあたる標準報酬総額が低く、財政基盤が弱い状態です。このため、前身の政府管掌健康保険時代から、16・4%から20%の国庫補助(負担)が法律で定められていました。

 しかし、一九九二年に暫定的に国庫補助が13%に下げられました。その後始まった後期高齢者への支援金は16・4%を国庫が負担したものの、七十五歳未満の補助割合は13%のままです。今回、現役世代の保険料率を9・34%に抑えるため、国庫負担を本来の16・4%に戻すこととし、法律改正します。

●健保連、共済は負担増

 問題は財源です。13%から16・4%に戻すためには年間約千八百三十億円が必要です。新たに国庫から九百二十億円を支出するものの、残り九百十億円については協会けんぽの後期高齢者支援金の国庫負担分から、現役世代へ充当します。

 支援金が減少した分については、サラリーマン全体での助け合いとして、負担能力に応じたしくみを取り入れます。従来は、報酬に関係なく加入者数に応じて支援金の負担割合を決めていました。この場合、加入者数の多い協会けんぽの負担が重くなります。

 そこで、支援金の三分の一は、新たに総報酬に応じた負担割合を取り入れることにしました。これにより、年収が高い加入者の多い健保組合、共済組合の支援金が増加。それぞれ五百億円、三百五十億円負担が増えます。協会けんぽの負担は八百五十億円減るものの、国費が九百十億円減るため、支援金については実質六十億円の負担増になります。

 健保連は「健保組合も赤字である上に国の負担の肩代わりだ」として反発しています。協会けんぽへの国の補助は、もともと財政調整の意味合いがあり、その肩代わりは納得できないとの主張です。

 しかし、今回の総報酬制は、報酬の多い人(組合)には負担をより求める考えです。これにより、健保組合の保険料が一律に上昇するわけではありません。報酬が低い(財政基盤が弱い)組合の負担が軽くなり、報酬が高い組合の負担が増えます。厚生労働省の試算では、健保組合のうち約五百六十組合の負担が減り、九百二十組合が増えるとしています。

●一元化か保険者重視か

 報酬に注目したしくみは、医療制度を考える上でも重要な鍵になります。制度間での財政調整を行い、医療制度を一元化していくのか? 保険者機能を重視し、ある程度の格差を容認するのか? 今回の措置は新たな高齢者医療制度が発足するまでの三カ年限りとされているものの、その後の医療制度にも影響を与えそうです。

 医療費が増える中、だれがどのように負担を分かち合うのか、考える契機になりそうです。

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