東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 生活図鑑 > 生活図鑑シリーズ・バックナンバー > 2010年の記事一覧 > 記事

ここから本文

【生活図鑑】

消防職員の団結権 主要国中 日本だけいまだ認めず(No.309)

写真

 主要国で日本の消防職員だけ、労働組合をつくる権利(団結権)がありません。英国、フランスは団結権だけでなく、ストライキ権まで認めています。日本は、労働者の団結権を認めた国際労働機関(ILO)の条件を批准しています。ILOなどから再三、是正を求められ、団結権を与える協議が行われています。なぜ、日本だけ認められていないのでしょう?

 労働者には基本的権利である労働基本権(団結権、団体で使用者と交渉する団体交渉権、ストライキなど争議権の三権)が保障されなければなりません。

 とくにILOは八七号条約で、すべての労働者に団結権を保障すべきことを国際労働基準として定めています。日本も条約を批准しています。しかし、主要国を見ても日本の消防職員だけ、団結権を含め三権すべてが認められていません。

●英国では三権保障

 主要国では、米国は州ごとに異なりますが、ニューヨーク州やカリフォルニア州などでは団結権、団体交渉権は保障されています。英国では、民間労働者と同様に三権とも保障されています。

 フランスも三権を保障、ただ団体交渉権にあたる協約締結権に制限があり、中央組織しか関与できません。ドイツでは団結権、団体交渉権が保障されていますが、協約締結権はフランスと同様のしくみです。

 なぜ、日本だけ認められなかったのでしょうか?

 消防組織が行っている活動には、消火、救急、救助、災害対応、予防査察などがあります。消火活動は、国によって多少の違いはあるものの、活動内容はほぼ同じです。

 消防職員の身分は、五カ国とも地方公務員です。フランス、ドイツでは、職員よりも身分保障が厳格な官吏と位置づけられています。具体的な活動実態や身分保障は、共通点が多くあります。

●ILOも改善を勧告

 州ごとに法律で決める米国を除き、ILO八七号条約を批准しているのも同様です。条約は、唯一の例外として警察と軍隊の構成員を挙げています。当初、日本の消防は警察と同様の扱いとの解釈がありました。その後、消防が条約に定める軍隊や警察に含まれないことを、ILOは明確に判断しています。

 警察と軍隊についても、団結権を保障するか否かは、それぞれの国の法律で決めればよいとしています。欧州を中心に多くの国が警察官の団結権を保障し、少数ながら軍隊にも認めている国もあるほどです。

 日本は八七号条約を批准しながら、消防職員の労働基本権を認めていない国として、ILOの条約勧告適用専門家委員会や結社の自由委員会などから、条約違反であるとして再三、改善を勧告されてきました。

 とくに一九八四年のILOの調査で、八七号条約を批准し公務員に団結権を保障していながら消防職員に付与していない国として、日本、ガボン、スーダンが挙げられました。その後、ガボンとスーダンは関係法の改正を行って消防職員の団結権保障を実現し、残るのは日本だけです。

●活動への支障例なく

 日本では、消防職員に組合をつくれば、消防活動に支障が出るのではないか、とくに組織の指揮命令系統が混乱するといった声が一部にあります。しかし、世界では米国の中枢同時テロなどを含め、団結権があることで消防活動に支障が出た例などありません。

 山火事の多いオーストラリアなどでは、組合があることで消防職員の士気が高まって活動にプラスになっているという指摘もあります。

 ILOなどの勧告を受け、政府は消防職員の団結権などについて協議しています。基本的な権利を認めるのか、注目されています。

ご注文はこちらから
 

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報