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【生活図鑑】

円高と暮らし(No.330) 海外旅行お得 雇用・賃金には不安も

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 円高が問題になっています。急激な円高は日本経済に悪影響だとして、政府・日銀は為替介入も行いました。円高は家計や蔵h氏にどう影響するのでしょうか?

 円高が暮らしにとって良いのは、輸入品の値段が下がることです。大手スーパーは「円高還元セール」を行い、輸入食品を20〜30%値下げしました。

 海外旅行は円高メリットを最も感じるものの一つです。海外で円を使うわけですから、サービスの輸入になります。とくに今はユーロ安で欧州旅行に「お得感」が強くなっています。欧米の高級ブランド品も安く購入できます。

 ただし、円高メリットを直接感じるには、使う機会が必要です。例えば、総務省の家計調査によると、二〇〇九年に外国パック旅行費の支出は、旅行していない人も含めた全世帯の平均で一万四千四百二十円、六十代で約二万円、五十代で一万六千円。五十歳以上で海外旅行の支出が多い結果でした。

●資源・穀物価格が上昇

 一方、レギュラーガソリンの店頭価格は全国平均で八月に一リットル当たり百三十四円でした。円高になっているのに、思ったほど下がりません。ガソリンや灯油が下がらないのは、原油価格が〇九年八月には一バレル=七一ドルだったものが一〇年八月には七六・六ドルと逆に上昇しているためです。原油だけでなく資源や穀物価格が上昇や高止まりし、円高メリットが見えにくくなっています。

 円高には困った面もあります。海外にモノを売ってドルやユーロで支払いを受けて、それを円にすると目減りします。このため、海外取引を行う企業は各期ごとの「想定為替レート」で業績の見通しをたてています。

●国内「空洞化」の恐れ

 経済産業省が八月に行った緊急調査によれば、一〇年の想定レートは一ドル=九○円程度、一ユーロ=一一〇円程度に設定されています。これは採算点です。対ドルで一円円高になった場合、各企業とも業績が悪化、株価も下落します。

 そこで製造業などは、輸出に見切りを付け、アジアや欧州での現地生産を拡大させます。調査では、一ドル=八五円の円高が続いた場合、四割が生産や開発を海外に移し、約六割が海外での生産比率を拡大するとしています。国内の生産や雇用が海外に流出して縮小する「空洞化」が現実のものとなって、暮らしそのものが脅かされる懸念が強くなっています。

 雇用が失われれば賃金も抑えられ、経済が悪化するデフレスパイラルから抜け出せなくなりかねません。政府・日銀はこうした経済への影響を考え、ドル買いの為替介入を行いました。

●適正水準は85・7円?

 同じモノの価格を基準にして国際比較をすると適正な為替水準を計ることができるという考え方があります。英エコノミスト誌が毎年発表するビッグマック指数が有名です。同誌の一〇年七月の調査によると、マクドナルドのビッグマックは米国で三・七三ドル、日本で三百二十円。ここから一ドル=八五・七円が適正為替水準となるとされています。言われている大幅な円高という視点とは違っているようです。

 暮らし、家計も為替をはじめ、世界経済の影響をより受ける時代になっています。

 制作・生活図鑑担当

 編集・亀岡秀人

 デザイン・佐藤恵理

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