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【生活図鑑】

労働保険を仕分け(No.339) 事業主負担の労働者保護 廃止に?

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 事業仕分けで注目された労働保険特別会計。労災保険の社会復帰促進等事業は原則廃止、雇用保険二事業は必要性の低いものは特別会計で行わないとされました。しかし、労働保険はだれが負担し、廃止とされた事業はどんな事業でしょう。

 労働保険は雇用保険と労災保険とを合わせた呼び名です。ともにその財源は労使の保険料です。負担割合は目的により違っています。

 雇用保険の保険料率は、二〇一〇年度で一般の企業1・55%。このうち、1・2%分は職を失ったときの失業給付の財源に充てられ、保険料は労使で折半しています。残り0・35%分は使用者(事業主)のみの負担で雇用保険二事業の財源に充てられています。

 労災保険も原則、事業主負担のみです。

●賃金未払いどうなる?

 仕分けで廃止とされた社会復帰促進等事業は、労働者保護の事業です。労災保険関連として義肢、車いすの費用などの支給や労災で残された遺族の就学を支援する就学援護費の支給を行っています。

 また、問題になったアスベストによる健康被害を防止する対策、過重労働などメンタルヘルス対策も重要な事業です。

 さらに、企業倒産などにより、賃金が支払われず退職した労働者に、倒産企業に代わって国が未払い賃金を立て替える事業も含まれています。

 経済情勢が厳しいなか、倒産案件も多く、立て替え実績は〇九年度で四千三百五十七件、三百三十三億九千百万円にも及んでいます。

 これを廃止した場合、賃金未払いになったときは、どうすればよいのでしょうか? 仮に一般会計で事業をする場合、財源は事業主負担から税金にかわります。事業主責任を果たしているといえるのでしょうか?

 雇用保険二事業には、不況時に賃金を支払いながら休業、教育訓練、出向を行う事業主へ賃金の一部を助成し、雇用を維持する雇用調整助成金などの雇用安定事業と、職業訓練や派遣労働者などへの能力開発事業とがあります。

 一〇年度の予算額は約一兆二千億円で、雇用調整助成金を除く雇用対策への支出は約五千億円でした。二事業については、財源は基本的に事業主の保険料のみです。雇用安定という企業の社会的責任に加え、労働者の能力開発をすることで、企業がメリットを受けるため、事業主負担とされています。

 廃止とされた事業には、非正規労働者などが受講した職業訓練の履歴を記すジョブカードの普及促進事業などがあります。ジョブカードは雇用を重視する菅内閣で、二〇年までに三百万人に普及させる目標が掲げられています。

 仕分け後、菅直人首相は効率性などを見直しながら、ジョブカード事業を進めるとしています。

 ジョブカード以外にも、非正規労働者や介護労働従事者のための教育訓練、支援事業も見直し対象とされました。これも特別会計で行わないとすると、国民の税金を投入するのでしょうか?

 確かに、景気が悪化するたびに経済対策の一環として雇用関連事業を行ってきました。このため、事業内容が類似するものも多く、この点は見直しの必要があります。

●雇用安定への企業責任

 労働政策を公労使で議論してきた労働政策審議会では「雇用保険二事業や社会復帰促進等事業は労働者の保護やセーフティーネットとして重要な役割を果たしている。労使の議論を積み重ねてきた」との会長見解を出しています。

 事業の見直しとは別に、労働関係では事業主負担になっている意味などをもう一度、考えてみる必要がありそうです。

 制作・亀岡秀人

 デザイン・刀祢絢子

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