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【生活図鑑】

年金の支給開始年齢引き上げ 現実味は(No.348) 65歳より上に?国民年金でも?

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 年金財政が厳しいなか、「人生90年」として支給開始年齢の引き上げが話題になっています。現在、厚生年金は65歳支給へ向け、段階的に移行しています。さらなる引き上げは、国民年金も含めることになり、影響も大きくなります。各国の状況とともに考えてみます。

 社会保障給付費は二〇一〇年に百兆円を超え、うち五十三兆円が年金給付です。少子高齢化が進み、年金財政が悪化するたびに、年金の給付抑制が行われてきました。支給開始年齢の引き上げもその一つです。

 支給開始年齢の引き上げというと、これまでは厚生年金が対象でした。国民年金は、制度発足時から六十五歳支給であったのに対し、厚生年金は当初、五十五歳からだったためです。

 このため、厚生年金については年金財政を考え、一九五〇年代に男性、八〇年代に女性が六十歳への引き上げを行いました。さらに、少子高齢化などを理由に、二〇〇〇年代に入り、六十五歳への引き上げを実施しています。

●「2歳」なら余地?

 では、支給開始年齢をどれくらい引き上げられる余地があるのでしょうか?

 六十五歳時点の平均余命(〇六年推計)や平均受給期間などで考えてみます。

 厚生年金で女性の支給開始年齢の六十五歳への引き上げが終わるのは三〇年度です。平均余命から見ると、男女とも五五年にはさらに二年ほど延びます。このため、五五年時点で六十五歳から二歳引き上げの余地があることになります。

 一方、定額部分の六十歳から六十五歳への引き上げを決めた時期の一九九五年で、六十五歳の平均余命は男性で一六・五年、女性で二〇・九年。九五年時点で年金は六十歳からの受給でした。このため、平均受給期間で見ると、二〇三〇年と一九九五年はほぼ同じと考えられます。

 報酬比例部分の六十五歳への引き上げが決まった二〇〇〇年と比べると、五五年の受給期間がほぼ同じになります。平均余命と比較し、このあたりをどのように考えるかという課題もあります。

 一方、支給開始年齢を六十五歳から引き上げるとなると、厚生年金のみにとどまりません。自営業者などが加入する国民年金も含むことになります。この場合、サラリーマンの定年延長だけでなく、自営業者や無職の人を含めた働く場や生活設計をどのようにするのかが必要になります。

●欧米では相次ぐ

 主要国でも年金財政の悪化から、支給開始年齢を引き上げています。

 米国は二七年までに六十七歳へ引き上げます。英国も四六年には六十八歳へ、ドイツも二九年までに六十七歳へそれぞれ引き上げます。

 フランスは一〇年に、一八年までに六十歳から六十二歳へ引き上げることを決めました。しかし、国民が反発し、大規模ストライキなどが多発、混乱しました。

 日本は主要国に比べ速いスピードで高齢化しています。ただし、支給開始年齢引き上げには解決しなければならない問題もあります。例えば、男性一人あたりの所得代替率(現役時代と比較した年金収入の割合)は、経済協力開発機構(OECD)によると日本は33・9%で英国と同程度、フランス、ドイツ、米国は日本を上回っています。

 また、年金受給に必要な資格期間は日本が二十五年と、主要国に比べ、長い期間を必要としています。

 日本では高齢世帯の60%が年金収入のみで生活しています。さらなる支給開始年齢引き上げは、年金制度を含めた議論が必要です。

 制作・亀岡秀人

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