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【生活図鑑】

自殺と雇用(No.355) 男性の安定雇用へ 取り組み重要

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 年間の自殺者が3万人を超えるなど、自殺が社会問題になっています。政府も社会的な取り組みにより自殺は防ぐことができる、として対策に力を注いできました。しかし、自殺者数、率とも高止まりしたままです。なぜ自殺が減少しないのでしょうか? 東日本大震災もあり、不安定な経済、特に雇用との関係を調べてみました。

 自殺者数は、一九九七年の二万四千三百九十一人から九八年の三万二千八百六十三人に急上昇した後、高止まりしています。特に男性の増加が目立ちます。九七年当時は、山一証券の自主廃業など金融不況に襲われた年でした。その前後には阪神大震災、派遣法改正などもありました。

 経済が低迷し、雇用環境が悪化すれば失業が増加し、新たに就業することも難しくなります。「経済を苦に自殺する」ことは以前から指摘されています。自殺と雇用環境はどの程度、関係しているのでしょうか?

●若年男性は非正規関係

 まず男性について、失業との関係を見てみます。七八年以降、人口十万人当たりの自殺者数である「自殺死亡率」(警察庁統計)と完全失業率の間には、失業率が上昇すると、自殺死亡率も上がる関係があります。

 完全失業率が九七年の3・4%から九八年の4・2%に上昇した際は、自殺死亡率も26・6から37・2に急上昇しました。また、失業率が5・5%に達した二〇〇三年には、自殺死亡率も40・1となりました。

 職種別でも無職の男性の自殺が多くなっています。

 年齢別に男性の自殺者数や自殺死亡率を見ると二十五歳から三十四歳、三十五歳から四十四歳といった若年層で上昇傾向にあります。雇用環境の悪化でフリーターなど非正規労働者の比率や失業率が高まっている世代です。一方、四十五歳から五十四歳は〇三年以降、減少傾向にあります。

 若年層では、二十五〜三十四歳では失業率と非正規雇用比率が自殺者数、自殺死亡率に強い影響を与えていました。また、三十五〜四十四歳では、非正規雇用比率が上昇すれば自殺者数が増加する関係にあり、不安定雇用が問題であることが分かります。四十五〜五十四歳では、失業率と自殺者数に強い関係がありました。

 男性の場合、雇用対策に力を入れ、失業率や就業率の改善に努めれば、自殺減少につながると考えられます。特に二十五〜三十四歳については正社員への就職など安定した雇用対策を行うことが重要です。

●女性は雇用と関係なし

 女性の場合、失業率、就業率などと女性の自殺死亡率の関係を調べると、関係性が見いだせませんでした。理由として、女性の雇用形態は、パート・アルバイトなど非正規比率が高く、主たる生計を維持している割合が少ないことなどが考えられます。

 〇九年の自殺理由で男性が「経済・生活」をトップに挙げるのが多いのに対し、女性は「健康」問題を理由に挙げる人が多くありました。

●震災後の失業対策急務

 東日本大震災などの影響で今後、経済の先行きなども不透明です。震災地域の雇用はもとより、全国的にも失業対策、安定雇用への取り組みなど、きめ細かな対応が求められています。

 制作・亀岡秀人

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