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【生活図鑑】

ハーグ条約(No.364) 子の連れ帰り規制 加盟への課題は

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 政府は、国際結婚が破綻した夫婦の子どもについて、片方の親が他方に無断で居住国から国外へ連れ出すことを禁じた「ハーグ条約」の加盟に向け、準備を進めています。現状と課題は?

 ハーグ条約の正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」です。一九八〇年に採択され、八三年に発効しました。現在、米国、カナダ、中南米諸国、フランス、英国、ドイツなど欧州諸国を中心に八十五カ国が同条約に加盟しています。

●米国から帰国100件

 発効から三十年近くが過ぎた今、なぜ条約加盟へ向けた動きが加速しているのでしょうか?

 背景は、国際結婚の増加に伴って国際離婚が増えたことです。中でも、日本人女性が相手に無断で子どもを日本へ連れ帰りトラブルになるケースが少なくありません。

 外国政府の申し入れによると、日本人による子どもの連れ帰り件数は二〇一一年五月時点で、米国百件、英国三十九件、カナダ三十八件、フランス三十二件でした。これらの国は、日本の条約加盟を求める動きを強めています。

 一方、外務省が一〇年に行った調査では、「(住んでいた国から)子どもを連れ帰った」というケースが十八件、「(日本から)子どもを連れ去られた」ケースが十九件、「外国の裁判命令などで子連れでの(国外などへの)移動の制限を受けている」というケースが二十七件ありました。日本人が子どもを連れ去られたケースも少なくありません。

●DVでは返還拒否も

 国際的な声に押され、日本も国内法の整備など、条約加盟に向け動きだしました。

 具体的には、担当窓口機関を外務省内に設置し、子どもの返還について判断する裁判手続きを新設します。新設機関は、子どもの返還を求める申し立ての交渉窓口となるほか、子どもの所在を特定し、任意での返還や当事者間での解決を促します。

 ハーグ条約では、国際結婚が破綻して片方の親が無断で子どもを国外へ連れ出した場合、他方の親の申し立てによって、原則として子どもを生活していた国に返還するよう求めています。十六歳未満の子どもが対象です。

 裁判所での審理期間は原則として六週間とするなど、迅速な返還に向けた手続きを行わなければなりません。

 このため、家庭内暴力などを受けて子どもを連れ帰ったのに、強制的に返還しなければならないのは問題との指摘が挙がっています。

 そこで政府は次のような場合、返還を拒否できるとして(1)返還を求めている親による子どもへの暴力や暴言があった(2)子どもの心に傷が残るような家庭内暴力があった(3)連れ帰った親が元いた国へ帰国した場合に生計が立てられず子どもを見守れない−などを認める考えです。 

 これらの理由に当てはまらなければ、ハーグ条約加盟後に相手に無断で子どもを連れ帰った場合、相手からの申し立てがあれば国内で裁判手続きが行われ、原則として子どもは生活していた国へ連れ戻されることになります。

 ただ、相手国がハーグ条約に未加盟の場合、こうした申し立ては行われません。

 制作・生活図鑑担当

 編集・亀岡秀人

 デザイン・佐藤圭美

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