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【生活図鑑】

事業主負担とは(No.378) 企業の社会的責任が問われる

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 社会保険では事業主負担があります。パートなど非正規労働者の加入を拡大すると、事業主負担が重くなるという意見もあります。一方で、労働者が実質的に負担しているとの指摘もあります。事業主負担というものの、一体、誰がどのように負担しているのでしょうか。

 高齢化の影響で社会保障費は年々増加し、社会保険料などの負担も増えています。このため、財界などからは国際競争力などに影響があるとして、事業主負担の軽減を求める提言などが出されました。

 今後、パートなど非正規労働者の社会保険加入拡大が進めば、さらに事業主負担が増加するとして反対の声も出されています。

 ところで、社会保険の負担はどのようになっているのでしょうか。厚生年金保険や健康保険、介護保険(二号保険料)、雇用保険の失業給付の場合、保険料負担は原則、労使折半です。労災保険は事業主が全額を負担しています。

 事業主負担と呼ばれてはいるものの、事業主が個人的に負担しているわけではありません。誰が負担しているのかについては、事業主負担も賃金の一部であり、労働者の実質的負担という考えも有力です。

 また、なぜ社会保険で事業主が負担するかについては、従業員の社会保障を充実させることで労働力を確保するなど、一定の利益を受けるためと考えられています。

●総人件費の中で調整

 社会保険料負担などは福利厚生費として扱われます。福利厚生費は社会保険料負担などの法定福利費と、住宅補助や慶弔金など法定外福利費に分かれます。

 経団連の調査によると、現金給与総額に占める法定福利費の比率は社会保険料率などの上昇で増加、二〇〇九年度は13・4%でした。半面、法定外福利費は年々減少し、〇九年度は4・9%まで落ち込んでいます。

 企業は社会保険料の事業主負担分などの増加を、従業員の福利厚生を削ることで調整してきたことが分かります。

 また、厚生労働省の毎月勤労統計調査(従業員五人以上)によると、現金給与総額(平均給与)は一九九〇年代後半から低下傾向が続いています。

 労働分配率もさまざまな指標があるものの、例えば一人当たりの労働者の報酬と就業者一人当たりの国内総生産(GDP)で見れば低下傾向にあります。

 結局、事業主の社会保険料負担などは賃金を含めた総人件費の中で調整され、労働者の負担と無縁ではないといえます。

●海外より低い比率

 社会保険料を国際比較すると、フランスは10%を超え、ドイツでも6%に達しています。英国は医療制度が税金で賄われているため、比率が低くなっています。欧州主要国に比べ、日本の事業主負担は軽いことが分かります。

 仮に事業主負担をなくしたり、軽減したりする場合はどうなるのでしょうか。当然、事業主負担の軽減分は賃金に反映されるはずです。しかし、本当に賃金として支払われるのか、財界などの考えは明確ではありません。

 新興国の台頭で国際競争は厳しくなっています。競争力を高めるために、社会保険料の事業主負担の増加分は賃金など人件費の抑制、価格転嫁、生産性向上などで吸収しているとされています。

 人件費比率を減らせば営業利益率が高まるとの分析もあります。このため人件費を抑えたいと考える経営者もいます。

 しかし、経済が厳しい状況だからこそ、雇用する者として事業主(企業)の社会的責任が問われているのも事実です。

    制作・亀岡秀人

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